異世界のアフレクションネクロマンサー329
ドラゴンと戦う恐怖よりも勝る想いを持ちながらも、戦闘機乗りとしての適性が無いという理由で
、除外された者達にとって、戦闘機乗りに選ばれた者は輝いて見える。
望みに手が届かなかった自分の隣で、望みに手が届いて喜ぶ者を見るのは、惨めな思いすら覚えるだろう。
戦闘機乗りになれなかった彼等に対して、同情しない訳では無いが、優先するべきはパイロット候補生に選ばれた者達の士気を高めること。
申し訳無いが、選ばれなかった者達の為に、自重してくれと言うつもりはないのだが、
「次の戦闘機が届けば、今のパイロット候補生より多いですよね?それは、パイロット候補生を再度選出するという事ですよね?」
「……君は本当に、真っ直ぐな子だね」
「えっ?」
周りで輝かしく光る光に、妬みという影を生み出して不貞腐れる事無く、諦めずに、ひたむきに光に手を伸ばす彼には、特別に手心を加えてあげたいという思いと、
「どうしても…死ぬ事になっても、ドラゴンと戦いたいのかい?」
「……覚悟は決まっています。僕達、孤児が戦争で死んだ場合、母達には莫大な慰労金も出ます」
「君が死んだら、それこそお母さんはショックで、心を壊してしまうのでは無いのかい?」
「……父が死んでから、母の心は壊れかけています。心を治す薬は戦闘機乗りになる事なんです」
「…………」
こんなにも真っ直ぐな子を、危険な戦いに巻き込みたくないという思いがあった。
戦闘機乗りにならずに、別の道を歩めば兵士よりも上の士官にだってなれるかもしれないし、何なら医師にだってなれるかもしれない。
彼には、まだ色んな可能性があるのに、それを戦闘機乗りという可能性だけで潰したくないのだが、
「父の…半分に砕かれた頭だけが帰って来た日から、母はドラゴンを恐れるようになりました。人は神によって、ドラゴンの供物の為に生み出された生き物だと嘆き、常にカーテンをして、外に出る事すら出来ませんでした」
彼には、どうしてもドラゴンに打ち勝ちたいという願いがある。




