異世界のアフレクションネクロマンサー328
雲の上のような存在に感じ、夢のような場所に思っていた街だが、街も人が住む所。
そこには私の村のように、喜怒哀楽があって人が生きている。
そして、人が生きていく為のルールが街の中にも存在する。
私は、薬屋の店主に、彼のツケている分の薬代を支払い、彼から今までの薬を、買い取るという形でお金を支払った。
その時の彼は、薬屋のツケを支払って貰っただけでなく、パイロット候補生になりたいからという、自分の願いで作って貰った薬まで、買い取って貰うのはと遠慮したが、
「いや、これは他の人にも使えるから、是非とも買い取りたい」
彼に余計な負担を掛けさせたくないという思いもあったが、実際、彼の用意した薬は他の者達にも好評で、飲むと集中力が高まると、薬を求める者も多く、それに彼の持って来てくれた薬のお陰で、戦闘機に酔わずに乗れると喜ぶ者もいた。
そうして、彼には戦闘機に乗る際の薬作りという名目で、手伝って貰っているのだが、
「明日…戦闘機がまた納品されるんですよね?」
「良く、知ってるね」
「はい、先生が側に置いて下さるお陰で、自分にもそういう話を振って貰えています」
彼が望んでいるのは薬作りでは無く、あくまでもパイロット候補生になること。
「正直羨ましいです……戦闘機を貰えた人達が、自分の名前を刻んでいるのが……」
それは、先生からの教えを真似た事で、戦闘機はパートナーになる存在だから、コクピット内に自分の名前を刻んで愛着を持つように言ったのだが、これが偉く気に入られ、戦闘機を与えられた者達は騎兵隊に選抜されて馬を与えられたかのように、戦闘機を愛機と呼んでいる。
それ自体は、パイロット候補生の士気を高める事で良い事であったのだが、
「そうか…乗れなかった人には、辛い事だよね」
「あっ…!?そういうつもりで、言ったのでは!!」
「うん、分かってるよ」
中には、彼みたいに悔しい思いをする者がいるのも事実であった。




