異世界のアフレクションネクロマンサー325
しかし、その事を責めるつもりはない。
私が空を思うがままに飛べているのは、先生に導かれていたからこそ、先生の見ているものを見たいという想いが胸にあったからこそ空を飛べた。
だが、彼等は違う。
彼等は、ドラゴンと戦う為に空を飛ばないといけない、私の時のような期待を胸に抱いていない。
大地から離れて、空に浮かぶ感覚が怖いというのもあるかもしれないが、それに輪を掛けて、ドラゴンと死闘を演じる事に恐怖を覚えているのだろう。
「私は…先生に逢えて良かった……」
今になって、彼等の強張った表情を思い出して、常人の理解を越えた行いのだと骨身に染みる。
それからしばらく、戦闘機のシートに背中を預けて束の間の休息を味わっていたのだが、
「先生、まだいらっしゃいますか?」
「あぁ…ここにいるよ」
パイロット候補生に落ちた兵士がいた。
彼は、空を飛ぶという事には恐怖を覚えていなかったが、目を回してしまった。
これは予想だにしていなかったのだが、空を飛ぶという恐怖以外にも、そもそもというのもおかしいが、空を飛ぶのに適性が無い兵士もいた。
そういう兵士達は、地上に戻る頃には体調不良で顔を真っ青にしており、ドラゴンと戦う気があったとしても、操縦が出来無いという問題を抱えてしまっていて、この問題のせいで、さらにパイロットの数が狭まってしまう。
「そちらに行っても?」
「いや、丁度降りる所だったから、そっちに行くよ」
彼は、パイロット候補生として落ちた後でも、こうして私の所に足繫く通い、
「良い薬が出来たのかい?」
「そうなんです。前よりもハーブを多く調合して、胸のつかえを感じにくくする薬を用意して貰いました」
私に、戦闘機に乗る為の薬を持って来ては、何度もパイロット候補生になる為のチャンスを貰おうとしていた。




