異世界のアフレクションネクロマンサー324
頭上を悠々と飛ぶ戦闘機は、空から注がれる太陽によって、花嫁のベールのように包み込まれる。
それは、我々人類が天を見上げた時に、ドラゴンが天から祝福を受けている光景。
誰にも手を出せない、ドラゴンしか入れない神域。
神に愛され、ドラゴンだけが許されていた祝福を、人が享受し、神に愛されたドラゴンに与えられた神域に、人がいる。
「彼は…救世主なのか……?」
多くの物語の中で描かれる救世主。
それは人という種でありながら、神の思し召しを受けた者。
彼が救世主だというのなら、あの空を飛ぶ戦闘機の存在意義が分かる。
神がチャンスを下さったのだ。
ドラゴンがいる限り、人類の繁栄はどこかで頭打ちなる。
頭打ちになった所で、じわじわと人類は衰退して消えていく……それを神が不憫に思って、一度だけチャンスを下さったのだ。
ドラゴンに打ち勝って人類が繁栄するのか、それともドラゴンがこのまま繫栄して、この世を支配する存在になるのか……一度だけ、争って未来を奪い合う機会をくれた。
「勝たねばならないな……」
王の手が強く握り締められる。
空を舞っていた戦闘機は、その存在感を示し終えたと、こちらに背中を向けると大通りの方へと降りていくのを見て、
「向かいに行こう」
「うむ」
将軍と王が、バルコニーから出て行くのであった。
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「ふぅ……」
今日も空を飛んだ、一日中。
朝から夕方まで、日が暮れて視界が確保出来なくなるまで。
空を飛ぶのは好きだが……
「体が持たないな……」
連日のパイロット育成。
まずは後部座席に兵士を乗せ、空を飛ぶ事に恐怖を覚えない者達を選別する所から始まった。
多くの兵士達が、戦闘機に乗りたいと立候補をしてくれたのは良かったが、実際に空を飛んで旋回と降下に上昇をしただけで、大半の者達が根を上げた。




