異世界のアフレクションネクロマンサー323
気象予報士でも無くても、今日一日は雨が降る事が無いと予測出来る程に、清々しい程の青空が広がる。
双眼鏡を使わなくても、遠くまで見渡せる空に、
「あれは…ドラゴンか!?」
ぽつんと一つ、影が浮かべば嫌でも目に付く。
「ドラゴンは一匹だ!!投石隊に連絡付き次第迎撃し、必ず仕留めさせろ!!国民は家の中から出させるな!!彼に付いては迎えの者を出せ!!」
踵を返してバルコニーを後にして、王の間へと向かう。
(こんなにも早く来るとは……だが、そんな簡単には屈しないぞ!!)
ドラゴンが相手にしようとしているのは、我が国だけでは無く周辺の国全てのはず。
こっちに来ているのは斥候、どの国から堕とすかを決める為の偵察。
ここで初動を間違えれば、一番最初に犠牲になるかもしれない。
彼の到着を待ちたい所ではあるが、それよりも先にしないといけない事が出来てしまう。
個人的な感情を捨て、王としての責務を果たす為に、王の間へと足を踏み出すが、
「待て、大丈夫だ!!」
「何がだ!?お前も早く将軍としての責務を務めろ!!」
緊急事態というのに、自分の腕を掴んでその場から動こうとしない将軍を叱り、腕を払ってでも行こうとするが、
「双眼鏡で見るんだ!!あれは彼だ!!」
「なんだと?」
将軍の言葉に足を止める。
何を言っているのか理解出来無い。
空の彼方から来るのが彼?
あんな遠目からでも見れるほどに、彼は巨体になったというのか?
そんな事を心の中で思いながらも、身体は勝手にバルコニーの方を向いて、双眼鏡を目に当てていて、
「何だ…あれは!?」
理解出来無い頭の中に、映し出された光景に驚きを隠せない。
何かが飛んでいる。
それはドラゴン以外の存在であるのは分かる。
それが生き物では無く、何かの物……極端な事を言えば馬車のような作られた物であるというの分かるのだが……
「あれは彼曰く戦闘機と言うらしい」
「戦闘機?」
何と凄まじい名前なのだろうか。
争うという「戦い」と、守るという「闘い」という二文字を合わせた戦闘機。
シンプルだが、何が何でも「たたかう」という確固たる意志を名前だけで表している。
そして、その名前に決して負けない存在感を出すそれは……
「こっちに来るぞ。肉眼で見てみると良い」
「これが…人が生み出した物だと言うのか」
遠くにいたはずのそれは、目に見張る勢いで大きくなっていくかと思った時には、街の上空へと入り込み、まるでドラゴンかのような、その姿を見せるのであった




