異世界のアフレクションネクロマンサー322
兵士達が立ち並んで、封鎖する大通りから門の方までを、なぞるように視線を送り、
「来るのは昼位か?」
「いや、もっと早く来てくれるはずだ」
彼の到着を待ち侘びる。
朝から始まった会議……というより、朝から始められた会議。
彼の即時撤退という判断と、その判断を即座に受け入れた将軍の判断。
この二人の判断力のお陰で、帰って来た者達の被害は無く。
本来なら、数日は続くであろう被害状況の確認、それに対しての補充、今後の対策、責任の所在等、多岐に渡る問題を解決する為に昼夜を問わずに駆け巡り、もしも玉砕覚悟で被害を出されていたら、こんなにもゆっくりとは出来ていなかった。
王は、一間の休憩と言わんばかりに、バルコニーの手すりに手を乗せてから背中を伸ばし、いつも椅子に座らされるのが腰にクルと言う。
「腰が辛そうだな?」
「戦争が始まっても、安全な所にいさせて貰える代わりだ」
いつも忙しく、慌ただしくしている皆と比べれば全然マシだと笑い、彼が来るまで談笑をしていると、
「来たぞ!!」
「おぉっ、来たのか」
将軍が、声を張り上げて彼が来たというので、大通りの方を見るが、
「……どの辺りだ?」
彼の姿は見えない。
もし彼が来たのなら、大通りを塞いでいる兵士達にも少しは動きが見えるものだと思うが、一切微動だにしない。
小さな文字を読む時のように目を細めて、彼を探すが見当たらない。
「いや、いるのはそこでは無いぞ」
「お前、そんなに目が良かったのか?」
大通りから、門位までの距離なら何となくで見えるが、門の外となると、さすがにそこまでは見えない。
将軍の肉眼で見える距離というのなら、既に街の中に入り込んでいるのかと思ったが、そうでは無かったらしい。
「それで、彼はどの辺にいるんだ?」
バルコニーに備わっている双眼鏡を手にして、門の外にいる彼を見付けようと、大体の居場所を教えて貰おうとししたが、
「見るのは空の方だ」
「空の方?」
将軍が指差したのは、雲一つ無い快晴の空であった。




