異世界のアフレクションネクロマンサー317
たった一人、最後の最後までドラゴンの危険性を説き続けてくれていた学者。
彼の懸命な訴えに耳を貸さなかった訳では無いが、逃げ出したと思ったドラゴンを追い詰めるより、眼前に迫る敵国との戦争に備えなければならず、ドラゴン討伐の為の別動隊を用意する余裕が無かった。
「……しかし、結果的にはこれで良かったのだ」
あの時、彼の懸命な訴えを聞き入れて、ドラゴン討伐に本腰を入れていたのなら、ドラゴンを始末する事が出来たのかもしれない。
しかし、それは同時に兵力を低下させ、我々がドラゴン退治で貴重な戦力を割いているにも関わらず、敵国は苦労する事無くドラゴンの脅威が完全に無くなり、兵力も温存出来てしまう。
そう考えれば、今回のドラゴンの襲撃は、ある意味一番良い形だったのかもしれない。
ドラゴンの襲撃によって、敵国も侵攻作戦を止めて、自国に戻って防衛に徹するなり、ドラゴンに対しての対処をしなければならなくなってしまっているはず。
どこの国でも、ドラゴンの脅威に晒され、今頃頭を悩ませている頃かもしれないが、
(私達には、あの方がいる)
我が国には、ドラゴンに対する知見を極めた学者がいる。
それは、ある日からだった。
ドラゴンの朽ちた素材が、町から届けられるというのは時々あったが、その日届いたのは、頭は潰れていたが、後は綺麗な姿をしていたドラゴンの遺体。
最初は、随分と運良く、これだけの物を見付けたと感心したが、それから一年後位に、とある村を経由して、ドラゴンの綺麗な素材が届くようになり、それが何を意味するのかは、すぐにピンと来た。
ドラゴンを狩猟している者達がいると。
急いで町に使者を派遣し、ドラゴンを狩猟している者達を、連れて来るように告げると、寄こした使者に連れられて来たのは、落ち着き払った一人の男性であった。




