異世界のアフレクションネクロマンサー316
気持ちの吐露。
それは、皆が誤解しないように説明のつもりで言ったのだが、焦燥した顔からの、溜息交じりに出た想いは、長い戦いに疲れている事を感じ取る事が出来る。
ずっと長く続いている戦争、それは王と呼ばれる人物が、子供の時から続く戦争。
ドラゴンがいるせいで、立ち行かなくなった国は、生き延びる為に他の国を侵略する。
滅びぬ訳にはいかぬと、他国を侵略してでも生き延びるという、必死な行いだったはずだったのに、いつしか他国を侵略するというのが、甘い蜜を吸えるという事に気付いてからは、ドラゴンを避けて、甘い蜜を求めて戦争が起きるようになった。
人の業……誰もが幸せに、生きとし生ける者達で、幸せを分けて生きようと思えない愚かな者達が、ずっと…ずっと昔から争い続けている。
その姿を、子供の時から目の当たりにしている王は、人の業を理解し、我が国を守る為に剣を握り締め続けて来たが、心のどこかでは、ドラゴンの脅威が無くなり、争う根本が無くなったのだから、平穏な世界が来るのではと一縷の希望を胸に秘めていたのも事実。
今回の事で、ドラゴンの脅威が続いていた事よりも、ドラゴンが例えいなくなったとしても、人々が平和に生きられる太平な世は来ないという事を示されて、辛かったが、
「それは仕方ありません。争わなければ生き残れない、最後の一つの国にならなければ平和な世界が来ないというのは、逆を言えば最後の一つの国になれば平和な世界が来るという事。平和な世界というのは夢物語では無く、必ず訪れる世界……どうか、ご指示を」
「……そうだ。いつかは戦争は終わる……だが、侵略する事で甘い蜜を吸えると喜ぶ者に、世界を統べさせる訳にはいかない。そういう者達は、戦争が終わった後にも甘い蜜を求めて、人々を苦しませる」
王の目に力が宿る。
戦争は必ず終わる、その戦争が終わった時に誰が玉座に座っているかで、人々の未来が決まる。
「良いか。今回の出兵に犠牲者はいない、見殺しにされた者は誰一人いない。この世に平和をもたらす為に、命を捧げてくれたのだ。亡くなった者達の家族への慰問は気を払え」
「はっ!!」
その言葉、王自身でも詭弁だと分かっているからこそ、丁重に扱えと「気を払え」と念押しし、
「それと、あの方をすぐに連れて来るのだ」
もう一つの大事な存在、平和な世界を創るのに重要な人物を、呼ぶように命令する。




