異世界のアフレクションネクロマンサー315
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「それで帰還したと」
「はい」
「愚かな……」
戦場から帰って来た将軍からの言葉に、玉座に座る王は天を仰ぎながら侮蔑の言葉を漏らすと、側近にいる者達、将軍の後ろに控える将官達が震える。
それは王が失望し、込み上げて来る怒りを抑えきれずに発した、心の底からの言葉。
それは王の心の底から、心頭まえで怒りに満たされているという証拠。
怒りに震える王と、恐怖で震える者達。
このまま時間が流れて、何とか王の怒りが収まるのを待とうと、声を発しないように息を潜める中で、
「お気持ち……お察しします」
将軍だけは怯まずに、言葉を投げ掛けると、
「……!?」
「っ!?」
王の間が一気に凍り付く。
触れれば怒りが溢れ出すというのが、誰でも分かる中で、言葉を投げ掛ける恐ろしさ。
投げ掛けた言葉が、心の器にぶつかれば怒りという液体がこぼれ出し、ドラゴンに立ち向かおうとせずに、自分達が仲間を見捨てて、逃げ出した事を叱責される。
王は、将軍から言葉を投げ掛けられて、仰いでいた視線を元に戻すと、将軍以外の者達が、自分と視線を合わせないように頭を垂れている。
震えて怯える者達、それに対して王は、
「すまない…皆を労う前に、個人的な怒りを漏らしてしまうとは……犠牲者が出てしまった事は悲し事であるが、皆が無事に戻って来てくれた事は喜ばしい事だ……良く、無事に戻って来てくれた」
先程の侮蔑する冷たい言葉と打って変わって、優しく相手を労わる声が聞こえ、
「王からの慰労の言葉である。皆の者、顔を上げるんだ」
「「「はっ!!」」」」
将軍が、王が怒っているのは別の事だと教え、顔を上げるように促すと、全員が顔を上げた。
先程までの凍り付いていた雰囲気はどこえやら、今は、全員が王の次の言葉を待っている。
王は、全員が顔を上げたのを見てから、
「先程のはな……人は何と愚かなと思ったのだ。ドラゴンの脅威が無くなったと思った時に、人々が互いに手を取り合えば、こんな事にはならなかったのではないのかと……人と人が争う隙を突かれて、このような事が起きたのではと思うと、人の業の深さに失望せざるを得なかったのだ」
自分が、発した言葉の気持ちを、包み隠さずに伝える。




