異世界のアフレクションネクロマンサー314
私の言葉に、そこにいるみんなが目を輝かせて、一体どのような方法で自分達を導いてくれるのかと、期待の眼差しを向けて来るが、
「……村に戻る」
「えっ…?それでは彼等は?」
私の言葉に、期待の眼差しで輝いていた瞳が、再び曇る。
分かっている、彼等が期待していたのは、この状況を一変させる魔法のような出来事。
今苦しんでいる仲間達を助けて、今すぐドラゴンを始末する方法を望んでいるのを。
しかし、現実はそんなに甘くない。
「残念だけど、ここではどうしようも出来無い……彼等を犠牲にして帰るんだ」
「そんな……」
「私達は、自分に出来る事をしないといけない……辛い話だが、その出来る事の中に、彼等を救うという行いは無い」
ここで、仲間を助けるために戦場に行けば、間違い無く皆殺しにされるだけで、ただただ、戦場で転がる消し炭を増やすだけ。
「それは…けれど……」
兵士達も、目の前で行われている惨劇に混ざれば必ず死ぬと分かっていて、その行いが無意味だというのは肌で感じているが、仲間を見捨てるという罪悪感が、その場から逃すまいと足を止めさせる。
いっその事、このまま判断を下すのが遅れて、ドラゴン達に襲われて逃げ惑い、命からがら逃げられれば、心も救われるというものだが、
「仲間を見捨てるという判断をするのは、心苦しいでしょう。だから、私の判断に従って下さい。あなた達が仲間を見捨てたのではなく。この私が見捨てたのです」
「それでは先生が……」
「押し問答は無しです。行きますよ」
これもまた、折れぬ心に毅然とした振る舞い。
仲間が犠牲になっているのを見て、動揺して不安な気持ちになって心を殺されないように、仲間を犠牲にするのは生き残る為と、覚悟する折れぬ心。
犠牲になっている仲間を助けないとっと同情して、あたふたと慌てふためかないで、成す事を成すという毅然とした態度。
戦場に背中を向け、悲鳴と命乞いの泣き声を聞こえるのを無視して先陣を歩けば、
「……行こう」
絶望に包まれて、身動きの出来なくなった彼等に、一歩前へと足を出す力を与える事になる。




