異世界のアフレクションネクロマンサー312
「そうですね。私が、戦場に立って役に立つ事は無いし、もしも立ったとしても、怯えるだけで何も出来無いでしょうけど……」
彼が言うように、村人である私がした事があるのは狩猟だけ。
人同士の殺し合い等、到底出来無いのだが、
「それでも行きたい…というより、行かないといけない……そんな気がするんです」
「行かないといけない……?まさか!?」
「確証がある訳じゃないけど、きっと来る」
戦場に、ドラゴンが来るような気がしてならない。
ドラゴン達が音沙汰無く、鳴りを潜めているのは人間を恐れているからでは無い、ドラゴン達はドラゴン達で人間を見定めているから。
人という存在を、捕食する熊や牛等の餌というカテゴリーから外して、自分達にとっての脅威となる存在として認めるべきかと、屈辱的であったとしても、ドラゴンという圧倒的な力を持つ種族と、同等な存在と認めるべきかと。
そうして、静かに我々を見定めているのを止めて、手を出す切っ掛けとなるのは……
「先生!!すぐにでも準備をして下さい!?」
「どうしたんだい?」
私と話をしていた、兵士の顔が真っ青になっている。
ドラゴンが来るという話で、血相を変えているのなら気が早い。
「そんなに慌てなくても大丈夫。ドラゴンが来るかもしれないという話は、私の予感なのだけであって確証のある話じゃない。それに、襲ってくとしても切っ掛けが、戦場で剣と剣を交わせるその瞬間を切っ掛けにするはず」
脅かすつもりは無かったが、ドラゴンの存在はやはり恐ろしいらしく……
「違うのです!!我々は第二陣で、一陣はすでに戦場に向かっているのです!!」
「そんな!?」
兵士の言葉で、状況が変わる。
「先生の予感通りなら、急がないと!!」
「連れてって下さい!!」
人とドラゴンという種が、どちらが世界に選ばれるかの戦いが始まる。




