異世界のアフレクションネクロマンサー311
しかしそれは、村人が下手に活躍して、名誉と栄光を手にするのが気に喰わないというよりは、役に立たないからという方が正しい。
それがどういう事かというと、時たま、戦場に名誉と栄光が欲しくてやって来る村人がいたりするのだが、血筋が悪いとか、片田舎の剣術とかそんな問題では無く、訓練がされていない。
それが意味するのは体力作りが甘いとか、陣形等の勉強をしていないとかでは無く、人を殺す訓練を一切していないのだ。
兵士になるための、最初の関門は、頭にずた袋を被されている罪人の首を刎ね。
次には戦場で捕えた、抵抗の出来ない敵兵の顔を見ながら、喉元に剣を刺す訓練。
ひたすらに人を殺す訓練。
自分の中の感覚がマヒして、人を殺す行為を肯定出来るようになるまで、殺し続ける。
これが出来なければ、血反吐を吐くような厳しい鍛錬も、頭が痛くなるような勉学も意味を成さない。
兵士というのは、これらの事を躊躇無く出来るようになった人殺しのエキスパート。
一大イベントである戦場に集うのは、殺しに躊躇しない者達。
生きる為に獣を狩るという純粋な行為だけをして来た村人と、殺す事で名誉と栄光を手にする、ある意味では欲の為に人を殺す者とでは目が違う。
名誉と栄光という名に、宝石のような輝かしい物を期待して、目をキラキラさせるのが村人なら、名誉と栄光という血が飛び交い、血の腐った臭いが漂うのを知っている兵士達は鷹の目のように鋭い。
戦場を理解していない村人は、初めての戦場に混ざる事で、戦場の本質を嫌という程身に沁みさせ、兵士という人を殺すのに特化した生き物に、獣以上の恐怖を覚えて役に立たなくなる。
だから、そういう意味で村人を戦場に連れて行かないというのが、通例なのであり、
「私が言うのも何ですが……戦場は血生臭い所です。人と人が殺し合うのは、獣を狩るのとは違います……それでも、行かれますか?」
私が付いて行こうとするのを、心配してくれるのであった。




