異世界のアフレクションネクロマンサー309
調査の際に、私の事を護衛してくれた人達。
「あぁ…これかい……?これは……目印だよ。迷わないで、ここに辿り着けるようにする為の」
「目印ですか…先生、やはり王都に戻られませんか?決して追放されたという訳では無いのですから……」
私が黄昏ていたのを、気遣ってくれる。
王都から追い出された訳では無く、王都で居を構える事を許されていたのに、残らずに王都を離れて田舎に引っ込むのを見たら、誰だって心配になるというもの。
「私達は、先生を必要としています。私達を助けると思って、戻って来て頂けませんか?」
兵士達は、私が王都で居を構えるという提案を、一度は蹴ってしまったのを知っているから、王都に来れるお膳立てをしてくれようとしている。
それはとてもありがたい事であり、ここまで自分の事を思ってくれる彼等には感謝しかないのだが、
「ありがとう。でも、私はここが良いんだ」
やはり、ここが一番好きなのだ。
先生との思い出の地、決して固執してる訳でも無ければ執着している訳では無い。
もしも、王都に来て欲しいとか、どこかに出張して欲しいと言われれば、その願いを聞き入れるつもりであるが、最後には、ここに戻りたいと願っている。
(繋がりか……先生のおっしゃられた通り、この世界に残って良かったと思っています)
あの時は、私は先生との繋がりしか感じられなかったが、こうして私の事を慕ってくれる人達と出会うと、あの時の「自分の命を絶ってでも、先生と一緒に逝きたい」という願いが、どれだけ早急な考え方をしていたのかが分かる。
「そうですか…ここに残られますか……」
私の変わらない気持ちに、兵士達は残念そうな面持ちになってしまうが、強制するようなマネはしないで、私の事を尊重してくれる。
「所で、今日はどうしたんだい?何か困りごとでもあったのかい?」
私の事を気遣って、ここに来てくれたのは分かるが、それとは別に彼等の着ている服が、鎧を着る前の軽装であるのを見逃さなかった。




