黒い海4
もう少しオカルト的に言うなら、それはオーラというもので……モノが持つ力と言える。
特別な目になってしまった礼人は、モノのオーラを見る事の出来るようになった目で辺りを見渡すと、庭に植えられた木にから、庭に生える草から白いモヤのようなものを見る。
他にも車や自転車、家の周りを囲む塀から家そのもの、それに道路に電柱と全てにオーラを見ることが出来る。
オーラは光のように眩しいものではないが、少し白を基調にしたサーモグラフィーみたいのが、普段見ている景色に掛かっているような感じ。
礼人はモノクルを外した白い瞳で世界を見ると、そこは白い雪景色に包まれた世界……
それはあの時の事を思い出してしまうほどに世界は白く、あまりこの白い世界を見たいとは思わないが、それでも必要な時は使わざる得ず、使ったことによって雪のように白い世界で異彩を放つのはやはり黒い穴だけであった。
霊力とマナを結合させて光の羽を作り出し、腰に備えているポーチから経文を取り出してゆっくりと慎重に黒い穴に近付いて行き、黒い穴に異変が起きてもすぐに対応出来るようにする。
少しの乱れもない綺麗な円、光が届かない漆黒の闇。
光を完全に拒む黒い穴の前に立って中を見渡すと、
「…やはり落ちてしまったみたいです」
落ちてしまった何かを見つけることは出来なかったが、真っ黒なコーヒーにミルクを垂らしたかのような白い生命線が底に伸びているのが見える。
「…もう間に合わないのね……分かったわ。あなたは今すぐそこから離れ……」
礼人から連絡を受けた女性は最悪の展開が頭を過るが、最悪の展開にさせないためにも一度、礼人を戻らせてから作戦を練るべきだろうと思ったが、
「いえ…まだ間に合います!!」
そう言った瞬間、礼人は手首のスナップを効かせて経文を一気に広げて経文に書かれている文字を唱えると、経文はまるで蛇のように礼人を囲む。
「礼人待ちなさい!!」
自分を静止しようとする声が耳に入るが、それでも礼人は水の中に入るかのように息を吸い込んで止めると、そのまま黒い穴の中に飛び込んで行くのであった。




