異世界のアフレクションネクロマンサー305
戦闘機の加速は止まらない。
けたたましい音と共に空を裂き、誰よりも速く飛ぶ戦闘機。
もう追い付けない、どれだけ水圧を上げ、どれだけペダルを踏み込み、エンジンが破裂する程に鼓動したとしても、追い付けない。
追い付けない、置いていかれる。
それは、先生の意志なのか?
私にはこの世界に残れと……赤きドラゴンの言葉を借りるなら、私の運命力では異世界への壁は越えられない。
……それはそうなのかもしれない、私何て本当なら村の中で、世界の隅で、何も遺せずに死んで
いく、何も無い凡人だった。
それが偶々(たまたま)、先生と出会う事で運命に華が咲き、凡人では見れない夢を見る事が出来た。
「先生……」
目から涙が溢れる。
出会って一年も経っていないのに、まるで、子供の頃に出会った恩師のように心を通わせたのに……
「逝かないで…先生……」
大切な人が亡くなる今際に立ち会い、何も出来ず、心の整理も付けられずに、見送るしか出来無い苦しみが胸に募り……
「先生!!私も連れて逝って下さい!!」
『キュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンン!!!!!!!!!!』
胸に募った想いを声をにして叫んだ瞬間、先生が白銀のドラゴンになって鳴き声を上げる。
誰よりも速く飛んでいた先生は、遂に赤と青の螺旋の中を突き抜けると、白銀に輝く先生の戦闘機を中心にして、赤と青の螺旋が解けて無数の翼が生まれる。
白銀の体に、赤と青の翼のドラゴン。
一人の人間と、二体のドラゴンの融合。
三位一体となった命は、運命を覆し、理から外れて異世界へと旅立つ。
「私も…!!」
もしかしたら、白銀のドラゴンになった先生の軌跡を辿れば、私も向こうの世界へといけるかもと、歯を喰いしばり、覚悟を決めて、軌跡の後を辿ろうとしたが、
『ダメだよ。君の力は、この世界を護る為の力になる』
翻訳機に文字が浮かぶ。




