異世界のアフレクションネクロマンサー301
『私に罪悪感があったのは、その通りだ。貴様の言う通り、この世界でドラゴンが覇権を取るのも時間の問題であり、覆らない運命だったが……』
私の事を見る、感情的なドラゴンの細まった目に、柔和に溶けた表情が合わせれば、
『彼の存在は公平を生む。それで我々ドラゴンが滅ぶ事になっても、自然淘汰に負けただけだ』
聖母のように、慈愛に満ちた視線を送ってくれる。
彼もまた、種が滅びる事は心地良くは思っていないのかもしれない、理に反する事をするのは嫌なのかもしれない。
『…………』
彼の思慮深い様子を見た、理性的なドラゴンは、私の存在を忘れたかのように冷たい視線を切って、
『それだけの心があるのなら、私の言っている事も理解してくれるはずだ』
決して暴君では無い、感情的なドラゴンに、今一度考え直すように求めるが、
『理解しているからこそ、周囲の世界を破壊する力を手にしようとしている、あの世界は滅ぼす。世界の均衡を護る為にも、あの世界は滅びなければならない』
その考えを改める事は無い。
『互いに思っている事は分かっているのに、分かり合えない何て……』
理性的なドラゴンの冷たい目が、寂しそうにし憂いを帯び、
『気にする事は無い。言っている事、受けた使命を考えれば正しいのは貴様の方だ……他の世界に影響を及ぼすという禁忌を犯す者を赦せないからと言って、他の世界の者が裁くという禁忌を侵す私こそが赦されない』
感情的なドラゴンが慰めの言葉を掛けるが、彼もまた悲しそうにしている。
互いに黄金のドラゴンとして生まれ、こんな事が無ければ、共に支え合う仲になれただろうに……
『さぁ、彼もここに来る……運命を背負いし者の力を借りて、ゲートを開こう』
『……最後に伝えたい事があります』
『どうした?』
黄金のドラゴン達の視線が交差する。
憎悪も無ければ、相手を目の敵にする事も無く、
『私は……あなたの罪を赦します』
『そうか…貴様に赦されるのなら、私も天の国へと逝けるというものだな』
相手を思いやる優しい瞳が、互いを慰めるが、
『ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!』
地上から鳴り響いた風が、彼等の気持ちを裂くのであった。




