異世界のアフレクションネクロマンサー299
それは町の絵画屋で見た、天使達に護られながら、下界に降りて来る神の姿に瓜二つ。
感情的に、怒りをぶつけるかのような言葉使いとは対照的に、六対の翼はゆっくりとはためかせ、ゆったりと黄金のドラゴンの方へと近付くと、その姿が露になるのだが、
『我等は同胞であろう!?共に我等の故郷を護ろうではないか!!』
彼の姿は、黄金のドラゴンのような魚のヒレを持つ姿ではなく、大地に付ける足を持つ、見慣れたドラゴンの姿なのだが、
「黄金のドラゴン」
彼もまた、黄金のドラゴン。
粗暴で粗野な言葉遣いに、黒炎の炎を振り注いだものだから、勝手に黒色のドラゴンを思い浮かべていたが、
『確かに…あなたと私は等しき存在です』
もう一体の、太陽の光を受けて輝く黄金のドラゴンを、彼は同じ存在だと認めた。
これで合点が行く。
先程の、大地を溶かす信じられない力を受けてなお平然としていたのは、同じ存在からのちょっとした小突きだったから。
あれだけの事をしても、血と血で争う火種にならないのは、あの程度の事で済んでしまうから。
二体の黄金のドラゴンは、ちょっとした戯れをして、お互いが同じ土俵で話し合える存在だと、認め合った所で、
『ならばこそ、私達が受けた使命を全うするべきなのです』
『それは断る!!』
『断る……それは、あなた自身、本来の使命を知ってるという……』
『そうだ、分かっていて同意出来無いと言っている!!』
感情的なドラゴンの乱暴な返事に、理性的なドラゴンは胸を膨らませてから、やれやれと言わんばかりに胸をしぼませて息を吐くと、
『あなたが分かっているのなら…私にも分かっている事があります……あの世界を滅ぼす為に、この世界を滅ぼすつもりだという事を』
『それは違う……向こうの世界は滅ぼすが、この世界では、生きている者の権利として頂点に立つだけだ』
『詭弁を!!』
今度は対照的に、感情的なドラゴンの方が躊躇った言葉を使い、理性的なドラゴンの方が語気を強めるのであった。




