黒い海3
必死になって走った結果が取り越し苦労ならそれで良い、感じた悪寒がただの疲労から来ただけなら……霊に関与しない超常現象は専門外、他に任せれば良いだけだが、
「穴を見付けました…1メートルくらいはあると思います……」
「1メートルって、そんなに大きく穴が空いてるの!?」
誰もいない静かな住宅街で、礼人の言う通り目の前には大きくポッカリと開いた黒い穴がある。
それはマンホールが外れて穴が空いているとか、地面が陥没したから出来たというような穴ではない、コンパスで描いたかのように綺麗なまでに真っ暗な円。
空から注がれる光がそこだけ注がれない……いや、そこだけ届かない。
空から注がれる光、この世界に貴賎に関係無く送られる天の贈り物。
誰にもでも平等に送られる天からの光が届かない。
そこだけ、最初からこの世に存在しないかのように黒い穴。
「穴は分かったは、それでいるの?」
オペレーターからの質問に応える形で礼人は異質な黒い穴の周辺を、何かを探すように見渡すが、
「いえ…いないみたいです」
周囲に変わったこといえば、黒くポッカリと空いた穴と誰もいないこの状況なのだが、礼人はそれ以上のモノは見付けられない。
異常は黒い穴一つ……普通の人ならそれだけで報告が終わってしまうだろうが、礼人はモノクルメガネを外すと、白色の虹彩の無い、白い紙に鉛筆で瞳のラフ絵を描いたような白い瞳でもう一度周りを見渡す。
白い瞳…それはあの時の霊力とマナの力の複合した際、片眼が力に満たされてしまったのか色彩が無くなってしまい、さらにその力の影響で髪の一部も白くなっていた。
礼人は白い瞳で周りを見渡すと、少し違った形で世界が見える。
その見えるというのは物から発するエネルギー、者が持つエネルギー……そういう目に見えないモノを、直接目で見ることが出来ないモノを見ることが出来るようになっていた。




