異世界のアフレクションネクロマンサー290
背中が後方に引っ張られる感覚と、体が浮く感覚が交差する。
大地から離れて空へと上がるごとに、周りの景色が置いていかれて、
(これが飛ぶという事なのか!?)
感じた事の無い感覚が、自分の脳のキャパシティを越えて一気に入り込んで来る。
目から入って来る情報と、体が感じる情報が一致しなくて、操縦桿を握る手に力が入ってしまうが、
『考えるんじゃない!!感じるんだ!!空を飛ぶ感覚を!!』
先生からの檄を受けて、自分の中に入って来る情報を下手に処理しようとせずに、感じるままに身を飛行機に、先生に預ける。
大地が、私を行くなと引っ張るが、空が、私に来いと引っ張る。
大地と空の狭間で揺れ動く私を……
『さぁ行くよ!!』
先生は、空へと連れて行く。
目の前まで迫っていた森を飛び越えて、そのまま一直線に上がると、空が広がった。
「……ここが空の世界」
大地と空の狭間から抜けて、空へと上がると、さっきまでの目まぐるしさが消えていく。
「…………」
何も遮る物が何も無い世界を何も考えずに見ている。
飛ぶ前の圧縮された感覚が空へと溶けて、身体が解放される。
何も無い世界で聞こえてくるのは、
『カルンカルンカルンカルン』
飛行機のエンジン音だけ。
静かに響くエンジン音を聞きながら、どこまでも広がっている世界に、心奪われていると、
『素晴らしい世界だよね。どこまで続いている世界、遮る物は何も無い世界。その世界を、この飛行機は飛んでくれるんだ』
先生が私の代わりに、空の世界の魅力と、その魅力的な世界を飛ぶ事が出来る飛行機の素晴らしさを口にしてくれて、
『さぁ、思うままに飛んでごらん』
「はい!!」
先生の補助の下、私は更に強くペダルを踏み込んで、飛行機を加速させた。
『カルンカルンカルンカルンカルンカルンカルンカルン!!!!!!!!』
空を加速していく飛行機。
私を乗せて、力の限り空を飛んでくれる。
操縦桿を操作すれば、その通りに動いてくれる飛行機。
従順に、素直に、良い子に従ってくれる飛行機に私は……
「頼む…頼むからもっと力強く飛んでくれ!!」
叫び声を上げていた。




