黒い海2
礼人はインカムから聞こえる女性からの説教をBGM代わりに街中を疾走すると、夏休みというのもあってか住宅街ではそこらに人がいる。
こんなにも人がいては妖怪等霊能者等と目立って仕方無いのではと思うかもしれないが、霊力を感じる方向へ向かうごとに人気が無くなっていく。
夏休みの午後だというのにそんな事が有り得るのかというと、それは生物が持つ本能が異常な霊力に反応し、危険を感じて自分の意識とは関係無くその場から離れるか、家の中に籠って姿を隠す。
走れば走るほどに照りつける太陽に明るく映し出された街並みが不自然なほどに静まり返り、やがて静寂に静まり返った世界に人一人いない、猫一匹鳥一羽すらいない、世界を彩る物全てがいない、時間が止まってしまったかのような世界がそこにある。
静まり返った世界を走る礼人、作りかけのゲームの世界のように何も無い世界を走り進むと、
(そろそろか……)
身体に冷たい風のようなものが走った。
普段なら熱せられた世界に相応しい熱風が身体を包み込むというのに、まるで氷穴から漏れ出たかのようにひんやりとしたものが流れてくる。
暑く照らされたこの世界に流れる冷たいもの、涼しげで良いではないかとと脳天気なことは言ってられない。
夏真っ盛りの住宅街、照らされるだけで熱くなるコンクリートの街に何も起きなくて涼しくなる現象などありえない。
それこそ冷凍冷蔵車がドアを開けっ放しになっていたとか、クーラーを全開にして窓を開けっ放しにしてない限りは肌に冷たいものを感じる事など起き得ない。
もしかしたらそんな偶然が偶々起きたていたかもしれないが、礼人が走り抜けた後にも、これから行こうとする先にもそのような車は無かっし、家の窓も玄関もしっかりと閉じられている。
そこにあるのは誰もいない、不気味なほどに静まり返った閑静な住宅街。
礼人は、その場で足を止めて息を整えると額から汗が浮かび、額に浮かんだ汗を腕で拭うが、腕に浮いた汗と合わさって大粒の汗になって顔を伝う。




