異世界のアフレクションネクロマンサー285
私の夢は空を飛ぶ事では無く、先生の軌跡を本にして後世に残したいだけで……
「パイロットというのは、さすがに話が飛躍し過ぎではないでしょうか?」
『じゃあこうしよう』
飛行機のパイロットになる事に難色を示すと、先生は、飛行機の反対側にも欠けられているハシゴに足を掛けて、コクピットを空けると、
『座ってごらん』
「それは……」
コクピットに座るように促される。
先程、他のパイロットがコクピットに座ったら、この飛行機は機嫌を損ねると言ったばかりなのに、座ってごらんという。
それをすれば、先生の言う通りなら、飛行機は気分を害してしまうはずなのに、
『この子に決めて貰おう。君が、パイロットとして相応しくなければ機嫌を損ねないし、パイロットとして相応しければ、機嫌を損ねる』
「……分かりました」
先生の意図を汲む。
ここで乗る、乗らないの押し問答をしても良いのかもしれないが、先生のおっしゃりたい事は分かる。
「私は…先生と出会えた事に運命があるように、私が、パイロットになるのも運命にあるのかもしれないのですね」
前までは興味本位で乗らせて貰っていた飛行機。
だけど今は違う、今は審判の時。
コクピットの中に入り、シートに背中を預け、まるで聖剣を抜く勇者のように操縦桿を握り、
「お願いします」
自分がパイロットとして選ばれるかの審判を求めると、先生は横から体を伸ばして、コクピットの中を触っていく。
何かの小さなボタンを触っていく、様々な物が動いていく。
それは、眠っていた飛行機の目覚めさせるための動作、
『ヒューー……』
先生に体を擦られて、次第に目を覚ましたていく飛行機は、小さな吐息を漏らし、主を空へと導く為に大きく空気を吸い込もうとした時、
『ヒューヒューヒュヒュウ』
飛行機は突然、咳き込んだ。
『ゴホッゴホッ』とまるで、喉に入り込んだ異物吐き出そうとするかのように。
「先生」
これで決まった。
飛行機は間違い無く、私をパイロットして選んだ。




