異世界のアフレクションネクロマンサー284
先生が乗らなくなったから、私も、飛行機に載せて欲しいとは言わなくなったが、最初の頃は物珍しくて、この飛行機がどんなものかソワソワとしていたら『座ってみるかい?』と優しく、生娘を扱うようにコクピットに乗せてくれた。
それからも、ソワソワとしながら飛行機に座りたいと言うと、笑顔で快諾してくれていたのに……
「何か…ありましたか?」
先生が断ったのは決して意地悪では無い。
先生は前に、この飛行機はメンテナンスをしてあげないと飛べなくなると言っていた……だとしたら、この飛行機は何かしらの不調が出て……
『この子を怒らせてくないだけだよ』
「怒らせたくない……?」
何かしらのトラブルに見舞われたのかと思ったが、何とも不思議な事を言われてしまう。
飛行機は…こんな言い方をするのは失礼だと分かっているが物であり、生き物では無い。
怒るというのは生き物の感情であり、まして、この飛行機に感情があったとして、一体何に対して怒るというのだろうか?
私が、先生の考えている事が分からずに怪訝そうにしていると、
『私の飛行機はね。他のパイロットが乗ってしまうと機嫌を悪くして、エンジンがぐずるんだよ』
「そう…なのですか?」
事情を説明してくれる。
説明してくれるのは良いのだが、その事情は「そうですか」としか反応出来ず、何と言ったら良いのか困ったが、
「……他のパイロット?他のパイロットとは?」
先生の「他のパイロット」という言葉が気になった。
私も、あの木製の飛行機には乗る予定だが、あくまでもそれは後部座席の方。
運転されるのは先生で、私は飛行体験をさせて貰うだけ。
いつの間に、パイロットまで用意したのかと不思議に思ったが、
『あの飛行機のパイロットになるのは君だよ』
「……何をおっしゃっているのですか!?」
先生が、指名したパイロットは自分であった。
今日までの話は、あくまでも飛行機の造り方を習う、造るというのが自分の目標であって、パイロットになる話は一切していない。
していないからこそ、操縦の方歩だって何一つ知らないし、
「無理ですよ先生!!私は飛行機の操縦方だって知らないですし、そもそも、あの飛行機は、この世界で、先生が乗る為に作っていたのでは無いのですか!?」
あの木製の飛行機は、先生の新たな翼になる物だと思っていた。




