異世界のアフレクションネクロマンサー283
そのまま日が暮れるまで眠り、夜になってからは納屋に戻って食事とお酒を振る舞う。
明日、日が暮れる前には、みんなは帰ってしまうから、六日間の疲れを今のうちに癒して貰おうとしているのだが、
「注ぐばかりではなく、少しはお飲みになって下さいよ」
自分にも飲み食いしようと誘って来る。
本当なら、大仕事を終えての宴会なのだから、私も遠慮する事無く、混ざりたい所なのだが、
「こらこら、我々は今日で終わったから良いが、先生方は明日一番の大仕事があるんだ。無理をさせるんじゃない」
そう、先生と私の大一番は明日の飛行機を飛ばす事、先生からは嗜む程度なら、お酒を飲んでも良いと言われたが、念には念を入れてお酒を控えている。
「残念ですが、明日の飛行試験が終わったら飲みますので……皆さんは、存分に楽しんで下さい」
せっかくのお酒の席で、自分が水を差す存在になってしまうのは申し訳無かったので、そのまま宴の席から離れ、隣の、私と先生しか入れない納屋の方へと向かう。
そこにはあの、先生が乗って来た鋼鉄の飛行機が眠っていて、
「先生」
先生は久しぶりに、飛行機の中に乗っていた。
飛行機に立て掛けられているハシゴを登り、先生の側に寄ると、
「集中されていたのですか?」
先生は、操縦桿を両手で握って俯いていた。
先生は、今でこそ色んな事を教えてくれる先生でいてくれているが、元々はこの飛行機を操縦するパイロット。
再び空に上がるという事は、初めて空を飛ぶ私とは違う感情……感傷的な想いがあるのだろう。
『何かあったのかい?』
自分が側にいる事に気付いた先生は、気恥ずかしそうに笑う。
「いえ、明日に備えて早く休もうと思ったのですが……」
久しぶりに空に上がる想い……それがどんな物かと聞いてみたかったが、まだ空に戻っていないのに、それを聞くというのは無粋という物。
「……久しぶりに、このコクピットに座って良いですか?」
話題逸らしに、この物々しく狭くも、赤ちゃんの揺りかごのようなコクピットに座りたいとねだってみると、
『それは…ダメだな』
「何故ですか?」
思いにもよらない答えが返って来た。




