異世界のアフレクションネクロマンサー280
眠りに付いたエンジンを、赤ん坊を抱き上げるように、みんなで丁重に扱い。
飛行機に載せて、最終チェックを済ますまでは良かったのだが、
「それでは皆さん、申し訳無いのですが……」
「任せて下さい。それ込みでここへ来たのですから」
本番はこれからだった。
飛行機はもう飛べる。
心臓が動けば大空へと、飛行機は旅立つであろうが、
「村のみんなにはお願いして、ある程度の滑走路は造ってあります」
旅立つ為に、助走をする為の場所が、まだ完成していない。
飛行機が旅立つ為の道を造るのに、一つだけ困った事があった。
空を飛ぶのに邪魔な木々を伐採する……これは対して問題にならなかった。
村の周りの木々を伐採するというのは、木々を集めるというよりは、外敵が近付かないように、近付いて来てもすぐに気付けるようにする為。
これを怠ると、狼や熊が平然と村の外周まで来たりする。
森の中に関わらず村の周囲がはけてたり、そもそも見晴らしいの良い所に作ったりするのには、そういう事情がある。
その為、村の近くの木々を伐採するのを、お願いする事態は良かった。
村をより安全にするという名目があったので、周囲を開拓するついでに一か所を滑走路の場所に貰う事が出来た。
生活の為にという名目の中で、木々の伐採を出来たのはありがたい話だったのだが、
「では、こちらをお持ち下さい」
「はいよ」
問題は、地面をならす事であった。
村の安全を確保するという理由だけなら、見晴らしを良くする為に、木々を伐採するだけで良い。
飛行機を飛ばす為には、車輪が地面に取られないように、馬車が通れる程に、地面を綺麗ならす必要があるのだが、それは視認性良くするという名目から離れている。
村のみんなと、自分の損益の益が重なるのは、木々を伐採するという所だけ。
馬車が通れる程に地面をならすというのは一大事業であり、そこまでやらせては、みんなに損を与えてしまう。
報奨金を村に渡したのだから、無理矢理やらせればと思うかもしれないが、報奨金を渡したからと言って、彼等を奴隷にしたという訳では無い。
報奨金を渡した見返りに、先生は、この村で悠々自適にいられるという権利を既に手にしている。
ここで報奨金を渡したから言う事を聞けと言えば、反感を買う可能性があった。




