異世界のアフレクションネクロマンサー278
こうして、昼過ぎに合流して来た工房の人達と挨拶を交わしてから、
「それでは、これよりエンジンの始動をしたいと思います」
「待ってました!!」
「我が工房の心血を注いだ物は完璧です!!」
飛行機にエンジンを組み込み前の試運転を始める。
工房の人達には万が一の事を考えて、エンジンを囲むように距離を取って貰う。
先生と私で、エンジンが設計図通りに、教えた通りに作られているのを入念にチャックしてから、仮タンクと繋げて給水口を開けて、
「では、ここに煮沸沸騰して集めた真水を入れます」
真水を注き、
「これで、燃料となる水を準備出来ましたが、これだけではエンジンは動きません。エンジンを動かすにはこちら、ドラゴンの秘石が必要になります」
「おぉ!!」
「なんと美しい!!」
そしてメインとなる、ドラゴンの鉱石を掲げると、黄色いコスモスの鮮やかな鉱石に感嘆が漏れる。
美しい輝き、色が付いているにも関わらずに向こう側が見える程の透き通る鉱石。
それがダイヤよりも貴重品とされ、献上すれば大枚の報奨が貰えるのも納得出来る。
「そしてこちらが、エンジンに入れる鉱石です」
小指の第一関節程の鉱石を取り出し、今度はエンジンの鉱石投入口に入れる。
「このエンジンを作って下さった皆さんに説明するも憚れますが、この中に入れた鉱石に水を吹き掛ける事によって水が蒸発して膨張し、尚且つ、鉱石から発せられる熱で圧力をさら高める事でピストン運動が始まります」
先生から、一度説明された事を説明しているだけなのだが、胸がドキドキする。
タンクの水を押し出す引き金を握り、
「いきます、先生」
『……』
先生が頷いたのを合図に引き金を押し引きすると、水が管を通り、エンジンへと流れていく。
『カシュカシュカシュ』
ドキドキする自分の心臓のリズムに合わせて、動くと信じて引き金を上下させ、エンジンへと水という名の血を注ぎ込むと、
『カル…カル……』
エンジンから鳴き声が聞こえる。
「今!?」
「遂に来るのか!?」
エンジンから聞こえた音に、周りのみんなもざわめく。
まるで、生まれてきた赤ちゃんが産声を上げようと必死になっているのを、見守るようにざわざわとなる。
「もう少しだ!!」
今この時、エンジンはこの世界に生まれようとしている。
冷たい体に血を流し込み、自分の心臓の鼓動をエンジンに伝えると、
『カルカルカルンカルンカルンカルン!!!!!!』
エンジンは遂に、鼓動を強く叩かせて、この世界に産まれる。




