異世界のアフレクションネクロマンサー275
才能も努力も何も無い。
あるのは暴力を行使するのに、躊躇いを持たない者が勝つ世界。
発展途上国で生活水準が低く、3種の神機であるテレビの代わりにラジオが主流で、洗濯だって桶に張った水に洗剤をぶち込んで揉み洗いし、冷蔵庫に至っては代用品が存在しない程に、文明レベルが低いのに、ずっと先の未来で作られるはずだった銃が蔓延する世界。
その国が辿るはずだった文明、文化を根絶やしにし、歪で狂った国を生みだしてしまった。
それは、他国への関与が不幸を産み出すモデルケースとなり、他国への内部干渉をするというのは、やってはいけない禁忌となった。
「先生…先生のおっしゃりたい事は分かりました……これは逆らうつもりで聞くのではありません……」
先生の言いたい事は分かる。
先生が持っている物は、生きていた狼を一瞬で死ぬ逝く者に変えた。
これが正しく使われれば、狩りも楽になり生活が豊かになるかもしれないが、これが人に向けられたら……地面にヒクヒクと痙攣している狼が人になる。
それは分かった。
それは分かったから、わがままを言うつもりはない。
先生が話したくない、教えたくないというのなら一切詮索をしないと誓えるが、
「なぜ、飛行機は教えてくださるのですか?」
過ぎたる力が人を滅ぼすというのなら、飛行機とて自分達には身に余る物。
それなのに、飛行機だけは躊躇わずに教えてくれる。
この矛盾は何なのか。
先生の事だから、何か考えがあるのは間違い無いが、こればかりは聞いてみないと一生分からないだろう。
先生は、自分の聞きたい事を違えずに理解してくれると、いつものように想いを文字に変えて、
『私が持っている銃は、奪い合い、殺し合いう為に生まれた技術だが、飛行機は空を飛びたいという夢が生んだ技術だからだよ』
私が抱いている疑問を、紐解いていくれる。




