異世界のアフレクションネクロマンサー274
先生は手にしていた銃を、私に出来るだけ見せないようにしまうと、帰りの道中で、思いを見せてくれた。
『人は段階を踏んで進化していく。最初は石を持ち、石を投げて獣と戦い、それから、砕けた石から鋭利な破片を見付けて枝に括りつけて槍を作った。便利な道具を創り出して、他の村よりも豊かになる……そういう思いだけで、獲物を狩り続ければ幸せな日々が続いていたのかもしれない……しかし、誰かが気付いてしまったんだ。自分体が持っている便利な道具は、他の村の財産を奪える力があると……その結果、次々と争う為の道具が産まれていったんだ』
「それは分かります」
肥大していく国、それを支えるには自分達の領土の町や村だけでは足りない。
足りない物を求めて、他の国を潰し、自分達の国の属国にして繫栄していく。
「敵国より優れた武器を作り、敵国より優れた防具を作る……そして、より発達した国が繫栄していくのは自然の摂理では?」
自然の淘汰……残酷ではあるが、繁栄を望むなら決して避けては通れない道。
滅ぶかもしれない危険を犯してでも、繁栄を望むなら……
『そうだね。それは自然の摂理だろう。だけど、自然の摂理で段階を踏んだ者達の技術を、全く発展していない者達に、誰かと奪い合える強大な力を、いきなり与えたらどうなると思う?』
「えっ?」
それは、想像していなかった質問。
教えて貰えるというのは素晴らしい事で、嬉し事だと思っていた自分は、先生からの問いに戸惑って、応える事が出来ずに、口が半開きになってしまう。
『私の世界では、それをしてしまったんだ。全く文化が発達していない国に、銃を作らせて納品をさせていたのだが、銃の作り方を知った国は、こっそりと自分達用の銃を作った』
「それは……」
その言葉を見た途端に、背中に冷や汗が流れた。
石を持ち、石を投げて狩りをしていた者達が、ある日突然、剣を持って弓を携えて、鎧を身に付ける。
『突然、与えれた力はその国を滅茶苦茶にした。力があり、学がある者が統率していたのに、誰もが頂点に立つだけの力が蔓延した結果、愚鈍で野心に満ちた凶悪な人間が幅を利かせるようになった』
突然、舞い込んで来た力は、国の繁栄の為では無く、人の欲望を満たす為の暴力へと変わってしまう。




