異世界のアフレクションネクロマンサー273
先生は色々と教えてくれたのだが、その中で先生が教えるのを躊躇った物がある。
それは、銃という物。
初めて先生がそれを使ったのは、町からの帰りの道中で狼に襲われた時だった。
護身用の刃物を持ってはいたが、狼の群れに対してはあまりにも無力で、森の中でこちらを狙う狼を刺激しないようにゆっくりと立ち去ろうとしたが、
『グルルルル……』
腹を空かした狼には、敵意を見せないで立ち去ろうとする自分達は、仔ウサギが怯えているように見えたらしく、
『ガァ!!』
一匹の狼が先陣を切って襲い掛かる。
護身用のナイフをちらつかせて威嚇する暇も無く、狼の口は大きく開かれて、自分達へと喰らい付こうとしたが、
『パパパン!!!!!!』
『キャッ!!』
何かが弾ける音が聞こえたのと同時に狼から悲鳴が上がって、狼は体をくの字に曲げると、地面で苦しそうに手足をばたつかせる。
一体何が起きたのか理解する間も無く、
『パン!!パン!!』
また、弾けると音が響くと、森が揺れて、
『クゥゥゥゥゥ……』
森の中にいた狼達が逃げ出すのであった。
一瞬の出来事に、何が起きたのか理解する暇は無かったが、
「先生何を……」
何かをしたのは、先生だというのはすぐに思い立ち、先生の方を振り返ると、その手には見た事も無い、鉄の塊を手にしていた。
それが、初めて見た銃であった。
もちろん、これに付いても何なのかと、どういう構造なのか教えて欲しいと願ったが、
『これだけは、必要になったら教える』
先生の口から、先生の手ほどきで、直接教えて貰えることは無かった。
群れで襲って来た狼を返り討ちにした力。
それはとても魅力的で、それはとても魅惑的で、それはとても魅了する物で……
『この力のせいで、狂ってしまった国があるから教えられない』
先生は、私が力に囚われたのを察していたのであった。




