異世界のアフレクションネクロマンサー272
指導して貰いながら、造り上げた渾身の作品。
納屋はしっかりと造られている為、太陽の光が差し込んできたりはしないのだが、飛行機という希望に満ちた光が心に沁みて眩しい。
この飛行機に、エンジンという心臓を載せれば、ドラゴンのように空を舞うことが出来る。
『…………』
「先生!!」
異界の地の言葉が耳に聞こえ、そちらの方に振り向くと先生がテーブルの前に立っている。
「先生、お久しぶりです。お約束通り、最高のエンジンを用意しました」
通訳しなければ言葉が通じないのは分かっているが、それでも自分の気持ちを伝えたくて、自分の口から自分の言葉で、この喜びを伝えると、
『…………』
先生は、このエンジンの素晴らしさを分かって、微笑みながら握手を求めてくれる。
それは、最高傑作を造った事への感謝と称賛であるというのは想像に難くなく、喜んでその手を握り返す。
先生との久しぶりの友好を温め、高鳴る胸を抑えながら、
「それで、エンジンを積むのは今日ですか?」
助手である彼に声を掛ける。
詳しい事は、彼を通さなければ打ち合わせは出来ない。
目を輝かせながら、この飛行機にエンジンが載せられ、空を飛ぶ姿を今か今かと待ちわびる工房の人に、
「そうですね……今日載せられるなら載せたいですが、その後の整備や、滑走路の事を考えると、飛ぶにはしばらく時間が掛かりそうです」
エンジンを載せたとしても、飛ぶにはしばらく時間が掛かると伝える。
そもそも『街』の工房に依頼せずに『町』の工房に依頼したのは、飛行機という存在を出来るだけ秘匿したいという先生の願いからであった。
本当なら村で組み上げたりせず、工房のある街や町で組み上げたなら、とうの昔に飛行機は完成しており、また、滑走路を造るのだってこんな木々に覆われた村よりも、開拓されている向こう方が準備
がしやすい。
なのに、それでも先生が頑なに村で造る事をこだわったのは、技術の飛躍は時として、不幸を起こすという先生のもう一つの教えからであった。




