異世界のアフレクションネクロマンサー270
あの時、親のドラゴンは街に献上したが、子ドラゴンはこっちで保管しようと先生が言いだした。
正直、我々の小さな村に置いていても、何かの役に立つはずもなく、最初は報奨金に変えた方が良いと勧めたが、
(先生、あなたは常に先を見ているのですね)
先生は微笑みながら『取っておいた方が良い、これは特別な物になるはずだから』そうおっしゃったので、みんなが子ドラゴンの遺体を村に置いておくのを嫌がったが、親のドラゴンを献上した報酬を丸々渡したおかげで、子ドラゴンの遺体はこっちで引き取らせて貰う事が出来た。
村の隅に居を構えたのは、飛行機の出し入れ為というのもあるが、子ドラゴンの遺体を置いておく事への配慮というのもあった。
先生が残した方が良いと言った、子ドラゴンの体内から取り出した物。
そこから黄色く鮮やかな鉱石を取り出し、
「もし、あの話が本当なら……」
町にいた時に聞いた話、ドラゴン血は万病に効き、皮膚は重厚な鎧に匹敵し、骨は聖剣となる。
だから、風化していないドラゴンを街に献上すれば莫大な報奨が貰えると言われ、その中でも特に、ドラゴンの輝く心臓は奇跡を起こすと囁いていた。
その話が本当ならと思い、工具から木槌を取り出して握り締め、
『ガンッ!!』
鉱石を叩くと、切った爪先程の小さな欠片が床に落ちる。
それを指先でつまみ、テーブルに戻ると、
「……いや、このままじゃいけない」
そのまま、ランプにいれようと思ったが、これで浮かせようと思ってもランプ自体が重すぎて浮けないと考えて、机にある紙を一枚拝借してクシャクシャにしてから籠のようにし、その中に水を入れ、四隅を糸で結んでから、
「……奇跡を!!」
ドラゴンの心臓の欠片を水に落とした瞬間、
『ブクブクブクブク!!!!』
水が一瞬で沸騰して、紙で出来た水の受け皿と一緒に紙が宙に浮いた。




