夢の中82
「…………っ!!」
礼人が跳び上がると、そこは日差しで世界が照らされる明るい場所。
周りは草木が生い茂るが、滑って遊ぶ滑り台、ゆらゆらと揺れて遊ぶ為のブランコ、鉄の棒を掴んでクルクル回って遊ぶ棒、それに足を水に浸ける場……そして、礼人が寝そべっていたベンチがある。
礼人がいるそこは、人々の憩いの場である公園であった。
夢の中とは似ても似つかない場所。
身体を冷やす白い雪は足元には一切無く、空から降り注ぐ日差しには熱さがある。
まるで夢の中の出来事とは反比例するかのような景色を、寝ぼけているかのように見つめ、
「…………夢か」
ここにいる所こそが現実の場所だと理解すると、もう一度ベンチに寝そべった。
空から注がれる光は、折り重なる葉っぱから漏れているにも関わらずに眩しく、自分の額を触ると手の平が汗で濡れる。
(そうか…疲れて寝てたんだっけか……)
軽く目をつぶって短く息を吐くと、せっかく寝たのに夢を見てしまったことで疲労を覚えてしまう。
夢…自分が霊能者で、オークの魂で作られた鋼鉄の巨人や寄生していた巨木の腕のエルフ……そしてじいちゃんやアニーさんが殺される……夢。
現実の世界とは真逆の世界で起きた出来事。
薄く目を開いて、太陽の光が漏れる木漏れ日に向かって右手を伸ばすと、
「霊能者って…辛いな……」
そう言うと、礼人の手の平から一匹の光の蝶が飛ぶ立つ。




