表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アフレクションネクロマンサー 序章  作者: 歩道 進
異世界のアフレクションネクロマンサー
819/1400

異世界のアフレクションネクロマンサー267

『気球を見た事があるかい?』


「気球…ですか?」


聞いた事の無い言葉に首を傾げると、先生はおもむろに一枚の紙とランプを取り出す。


紙をクシャクシャにして籠のように形作ってから、ランプに火を着けて上にかざすと、


「紙が飛んだ!?」


クシャクシャの紙が『ふわっ』と宙を飛び、ランプから離れるとそのまま床に落ちた。


空を飛んだ紙を床から拾い上げ、そこに何の仕掛けがあるのかと、マジマジと覗き込むように仕掛けを調べるが、先生が自分の肩に手を掛けて来て、ランプの方を指差す。


それは、自分と同じようにやってごらんという事であり、そうすれば謎が解決すると言っている。


先生の指し示された通りに、紙をランプの所に持って行き、そこで同じように紙をかざすと、


「これは!?」


ランプの熱を逃がす排熱口、そこは冬場で手を暖める時にかざす程度の部分であったが、こうして紙をかざすと、熱以外の物も感じる。


紙を通して感じる押して来る感覚。


風に吹かれているような感覚。


それを、ランプと紙だけで感じている。


今まで身近にあり、いつでも知ることが出来たのに、知る事が出来なかった。


(先生は、本当に凄い方だ)


先生と一緒にいられる時間は奇想天外な事ばかり。


子供の頃は王都じゃなくても良いから街へ、それもダメなら町に住みたいと思って、月に数回の宣教師の勉強を習ったが、それまでだった。


宣教師が黒板に書いてくれた文字を覚え、教会にあるボロボロの聖書を解説してくれたが、何回も読むうちに聖書も、いずれは文字を覚える為の道具となり、それ以上の物を手にする事は無い。


村で採取した物等を町に届け、過剰分を売りに行く時、いつもボロボロな中古の本に目を奪われた。


街から流れて来た古本。


そこには、聖書とは違う新たな知識が書かれていたのだろうが、古本とは言え高級品であり、立ち読みなど到底させて貰えない。


いつもあそこには何が書かれているのか、どんな知らない世界があるのかと、手が届かないのに、思いを馳せると悲しい気持ちになっていたが、


「先生、見てて下さい」


先生と同じように紙から手を離すと、空を飛ぶ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ