異世界のアフレクションネクロマンサー266
それから、村一番の識者として、お世話係という名目を与えられて、彼の家に行くようになってから、
「先生、おはようございます」
彼は、私にとっての先生となっていた。
「今日は、例の物が届きます」
あのドラゴンの襲撃から一年間、あの飛行機は空を飛ぶ事は無かった。
話によれば、飛ぶ為の燃料の問題もあるが、手入れをしないで空を飛べば、二度と空を飛べなくなる可能性が非常に高いらしく、必要な時が来るまで保管していた。
では、その間、先生と私は何をしていたかというと、
「このエンジンを積めば、空を飛べるようになるのですね」
テーブルの上には、二人で作った飛行機に乗せるエンジンのミニチュアが置かれている。
そう、この一年間の間で先生と二人で、飛行機を作ろうと試行錯誤を繰り返していた。
当初は、先生の乗っている飛行機を作りたいとねだってみたが、先生はあくまでも飛行機に乗るパイロットという立場で、あの飛行機は、先生でも造れる代物では無いと言われてしまう。
先生でも造れないと言われては、駄々をこねる事も出来ず、それは残念ですと諦めようとしたが、残念そうにしている自分を見て、先生は代わりに祖となる技術を教えてくれた。
最初は蒸気タービン、水を沸騰させた水蒸気で直接、プロペラを回す簡単な物から始まり、次には蒸気機関、シリンダーを使ってのピストンによってプロペラを回す技術を学ぶ。
棚の上には、先生に教えて貰って作った作品の数々が並び。
クルクルとプロペラを回して風を起こす道具、自らタイヤを回して、地を走る車なる物もあれば、プロペラを回して空を飛ぶ飛行機。
どれも見た事の無い物に目を輝かせ、これを大きくすれば人も乗れると期待したが、先生はここで首を横に振った。
ここまで作って、実際に動くのを目の当たりにして、何がいけないのか分からず、
「費用なら先生が寄付して下さった分で十分に賄えますし、必要な物は自分達で揃えましょう」
費用的な部分の心配も無く、足りない物があれば頑張って揃えると言ったが、
『水を沸騰させたエネルギーで、人を乗せて動く事は出来るけど、燃やす燃料が問題なんだ』
それでは解決出来ない、根本的な問題を抱えていると返されてしまう。




