異世界のアフレクションネクロマンサー255
空から落ちてくるドラゴン。
羽を1回も羽ばたかせる事無く、放り投げた人形が落ちてくるように、身動きせずに大地へと向かって来て、
『ドザッッ!!!!』
大地にその身を叩き付けてもなお、動こうとしない。
あの一瞬で、何があったのかは分からないが、
「これは……」
下顎だけ残して、頭を吹き飛ばされているのを見て、死因が分からない者等いるはずもない。
残された下顎から垂れ下がる太い舌、喉から食堂への入口、テカテカと光りながら血を溢れさせるドラゴンの死体は、スケッチしたくなるほどに新鮮だった。
『キュわぎゅわ!?』
『きゅうキュース!?』
数秒前まで、人間で狩りの練習をしていた獰猛なドラゴンが、今では泣きじゃくる子供になっている。
数秒前までは、生きていた親にすがる子ドラゴン。
さっきまで、散々人間を襲っておいて等と思わない。
こんな死に方等見たことが無い、先程空を飛んでいたのは何なのか大きな怪鳥?それとも新たなドラゴン?それか……
『ヒューーーーーーーーーーーーー!!!!!!』
空に響く、空を切り裂く音。
その音にみんなが震える。
ドラゴンも、人間も関係無い。
その音は死を運ぶ。
「まさか……」
神にも等しいドラゴンを殺せる存在、そんなのはこの世界にはいないかもしれないが、向こうの世界にはいる。
そう、向こうの世界。
神にも等しい存在を消せる存在、神が創り出した存在を殺せるその正体は、
「死神……」
神そのもの。
このドラゴンの家族は一体、何をして神の怒りを買ったのだろうか?
『『…………!?』』
死神という名を聞いた途端、子ドラゴンは体をビクッと振るわさせて、親のドラゴンの死体を、目から涙を零しながら見つめるが、種を守る本能に従ってバラバラの方向に逃げ出す。
本能が叫ぶ両方は生き残れないと。
どちらかはこの世界に残る事を言い付けられて、どちらかは親の下へと逝く事が許されると。




