異世界のアフレクションネクロマンサー253
離れた地から望遠鏡で、焔が暴れ回る様を目を見開いて覗く。
口では、ドラゴンの裁きを許せないと吠えるが、目が呆けた口のように開いていく。
圧倒的な力の差だけじゃなく、自分達が作り出した爆弾気球は意味を成さ無かった事への絶望。
「我々はどうすれば……」
あの時、付き人として一緒にいた兵士も、望遠鏡の中で神に命乞いしながら次々と死んで逝く者達の姿を見て絶望を覚える。
あの調査の後、爆弾気球を作って、ドラゴン退治を見事に成し遂げたと称えられたのは良かったのだが、その後、隣国との戦争を優先する派閥に追い出されてしまう。
学者は、ドラゴンは利口な生き物で、何らかの対策をしてくるかもしれないから、対ドラゴン用の新たな兵器を作りたいと、国税を投入して欲しいと願ったが負けてしまった。
それはドラゴン達の策略通り、爆弾気球を見たらすぐにその場から離れるという行為で、多くの者達が躾が終わったと見くびったから、学者が、どれだけこれは反抗作戦の前触れだと訴えても、
「ドラゴンの討伐に、あなたは十分貢献したが、ドラゴンだけが全てでない」
周囲に抑え込まれてしまう。
まるでこれでは、学者が良いように扱われて捨てられたかのように思えるが、ここで1つだけ補足しておくと、どこの国でもドラゴンを無力化したと思った途端に、戦争の準備と言わんばかり兵力の増強を始めていて、何も周りの派閥が言っているのが滅茶苦茶なのではない。
「感謝はしている。空の問題を解決してくれたのだから。ただ、国政に学者の声を入れられる訳にはいかない」
政治屋と学者では、越えられない壁があった。
もちろん、政治家の中には、学者が自分の身を省みずにドラゴン達の争いの真っ只中に行った事を高く評価してくれた者達もいて、学者の願いを何とか叶えて欲しいと口利きもしてくれたお陰で、
「そなたには感謝をしている。褒美を取らせる……また、我々が困った時に力を貸して欲しい」
国王からは、当初以上の報酬と、今回限りの関係では無いと明言もして貰えた。




