異世界のアフレクションネクロマンサー233
「視てて気付いたのですが、力を圧縮して自分の体の中に留めているというよりは、力を吸収して自分の物にしている……信じがたい才能。ただ命を寄せ合わせただけの私と、比べられない才能」
自分自身の中にある力で自滅する子供を嘲笑う事無く、称賛する人影。
「がっがぁ……!!」
「制御を掛けましたか……あなたの力は生きている。私の中の本能で動く命と違って」
子供の暴れ回る力、外部からの脅威に反応して本能が自分を越える力で守ってしまったが、子供の中で駆け巡っている力が、自らストップを掛ける。
子供の本能で暴走した力は、自らの意志で制御を掛ける事で、子供が自滅するのを防いだ。
「うっ…うぅ……」
「少々、思っていた結果と変わってしまいましたが……お話ししましょうか」
自らの力で、地面にうずくまっている子供に手を伸ばす人影。
それは、子供を手助けしようとしているのではなく、
「あなたの中の人達と、お話させて下さいな」
子供の事は良く分かった。
この子が優れた才を持っていて、
「さて、あなた達は誰何でしょうか?」
それとは別に、力そのものに意思がある。
子供の実力が伴っていないから、本気を出せないでいる力。
子供の中に内包されている力を知りたくて、子供の心臓辺りに手を添えて、
「むっ!?」
子供の中に入り込もうとした瞬間、体が消滅した。
子供の中の力が、人影が入り込もうとしたのを拒否して消滅させたのではなく、
「なるほど!!少々調子に乗り過ぎましたか!!」
人影が触れて来るのを待って、反撃したのだ。
「エキスパート相手では、私の方が分が悪いですね!!」
子供の中にいた力は、触れた人影の分身を消滅させるだけでなく、繋がっていた部分を侵入にして、本体にまで入り込んで来る。
導火線に着いた火の如く、凄まじい勢いで近付いて来る力。
「ふふっ、好きですよ!!強くなるための試練は!!」
人影は、今度は力の差を演出する為に体を切断するのではなく、生き残る為に体を切断して、力に捕らわれた部分と離れる。
「これは危ない!!もう少しで消滅する所でしたよ!!」
下手に反撃する判断をせずに、不格好であろうが何だろうが、力から逃れる判断が功を奏した。
『ジュッ…!!』
あと少し、一瞬でも判断を間違っていたら、分離して残した体と共に消滅していた。
「運も実力のうちとは、よく言ったものです!!」
子供に直接手を着けなくて良かった、触れていたら間違い無く瞬間で消滅していて、偶然とはいえ、子供から離れていた距離が、自分に届くまで後一歩であった。




