異世界のアフレクションネクロマンサー230
元の肉体では見上げる事しか出来なかった景色を、居場所として飛び立つ事が出来る体。
夢にまで見て臨んだ英雄の体。
素晴らしき体、比類無き体。
リザードマン達の英雄であるドラゴン、エルフの英雄アフレクションネクロマンサーに匹敵しうる体を手にして、自分も高みの空を飛べると喜んだが、今、格の違いを見せ付けられた。
自分は左足を再生するのに「一」瞬という一間があるが、子供は掴んだだけで「瞬間」で溶かした。
再生した左足を『ぶらぶら』と揺らしながら驚いた心を鎮め、自分が如何に井の中の蛙だったかと思い知りながらも、
「素晴らしい力です……あなたは、アフレクションネクロマンサーなのですか?」
ならば、手にした力で井の中から飛び出せば良いとも思う。
「私は見ての通り、アフレクションネクロマンサーではない存在……ですが、そこに辿り着くのを許されています」
子供が、地面に手を付けて、ゆっくりと立ち上がるのを見守りながら自己紹介をしていくと、
「妖怪が……」
子供は、お前の事等どうでも良いと、明らかな敵意を見せて手を振る。
「んっ……」
今度は子供が手を振るったのに反応して、自分の右手を振り上げたが、その右手が振り下ろされる事無く、
『ジュッ!!』
身体が瞬間で消える。
それは、さっきの勇猛果敢な戦士を消し去った時と同じように、相手にした事を自分にもされた。
身体が消滅した影に残されたのは右腕一本。
振り上げた事で、肘から先だけは消されずに済み、振り上げた勢いのまま子供から離れていく。
空を飛ぶ右腕、勢いのままにあられもなく飛んで行き、そのまま大地に落ちるという所で、
「圧倒的な力…英雄の力……敵いませんね」
右腕から声が聞こえると、もう大地に付くというほんの少しの間で、大地から黒いモノが沸騰したお湯のように湧き立って右腕と引っ付くと、体が一瞬で作り治される。




