異世界のアフレクションネクロマンサー221
森羅万象の影がこの地にいる事で、この地から周辺は立ち入り禁止区域にせざるを得ず、復興をしたいと願っている我々にとっては困った存在であり、その考えから影を対処するべき対象として考えていたが、
「壁を作るな道を作れ!!」
その考えが、思い込みから始まっているのだと考えを改める。
もしも、自分の考えている通りなら、これ以上押し留めるようなマネは自殺行為、影が逃れられるようにする為に、壁を作るのを止めて自分達の周辺だけに経典を張ると、
『おぉぉ…おっお;お…おっおぉおl……おっ……』
苦しそうに泣き声を上げていた影の声が、嗚咽になり、必死に結界に抗っていたのが嘘のように抵抗しなくなると、霊能者達を気に留めないで、救いを求めてズルズルと荒野を進み始める。
様々な姿になった影が、それぞれ救いを求めて散り散りに去って行く。
これで一段落した、地面にうずくまって身動きしない栄華も、黒い雨から難を逃れた。
「もう一度調査をしないとだな」
中々調査の進まない森羅万象の影。
最初の頃に、市街地に影が入り込んで周囲を燃やしてしまう事件を起こしてから、影は人を襲うと認識してしまっていたが、
「鳥の形をした影はどうする?」
「すぐの危険性は無いだろうが、封鎖域の入り口にいる者に連絡をして事情を説明して対処して貰おう
人とを襲う為に飛んでいるのではなく、救われようと徘徊しているのなら真っ直ぐに、市街地の方には向かう可能性も低く、この地までは車で来なければならない程には、封鎖域の入り口からは距離がある。
「栄華を連れて帰ろう」
何なら、車を飛ばして帰ればこちらの方が速く戻れる可能性もある。
とりあえず、大地に点々とする黒い染みを避けて、栄華の側に寄ると、
「霊写機を最後まで守ったのか……」
栄華の胸の中で守られた霊写機があった。
「……よく頑張った」
それは霊写機を守った事を褒めたのではない、自分の命をちゃんと最後まで守り抜いた事。
霊能者は、霊写機ごと栄華を抱き上げて、栄華を起こさないようにしながら、
「帰るか」
「そうだな」
「まだまだ長くなりそうだ」
全員、妖怪対処の緊張から解放されてか、凛とした雰囲気から仕事に疲れたサラリーマンみたいなグッタリした雰囲気を出しながらも、帰路に付こうと……
『ふぅん……この世界のアフレクションネクロマンサーはこの程度ですか?それとも、アナタ達はアフレクションネクロマンサーではないのでしょうか?』
「誰だ!?」
突然誰かの溜息交じりの、自分の部隊以外の声が聞こえる。




