異世界のアフレクションネクロマンサー220
逃げ場を無くした栄華は、霊写機を抱きしめてうずくまる。
霊写機を守る為ではなく、捨てられた仔犬のように、何かにすがりたくて無我夢中でうずくまる。
「誰でも良い!!払え祓え!!」
みんなが、自分のの事を助けようと雄叫びを上げているのが耳に聞こえる。
「誰か!!霊力を形に出来る奴はいないのか!?」
「実戦で使えるほどの奴はいないだろ!!」
空を飛ぶ鳥影に、誰も届かない。
蝶を飛ばせる二月、弓矢を形成出来るアニー、それに空を飛んで神の裁きを撃ち込む礼人。
この三人のイメージがあるから、たかだが空を飛んでいる相手にと思うかもしれないが、この三人が、歴戦の二月、天性のアニー、そしてその二人から力を授かった礼人だから、遠くにいる悪霊や妖怪と戦えるのだが、一般的な霊能者では手が届かなければ、追い払う事も、現世から祓う事も出来無い。
決して鍛錬不足ではない、特別な力。
特別な力が無い彼等は、別の何かの手立てが無いかと鳥影の方を睨み付けた時、
「……栄華!!気絶するつもりで霊力を高めろ!!」
「影は飛んでるだけだ!!」
ここで初めて、鳥影が空を飛んでいるだけで、ボタボタと落とす黒い雨は意図したモノでは無いと気付く。
栄華が偶々(たまたま)、鳥影の進路の真下に入り込んでしまっただけだと気付いて、
「こんなのは通り雨だ!!耐えろ!!後は俺達で何とでもしてやる!!生きろ!!」
栄華が自分の事を考えて、自分の事に集中出来るように言葉を投げ掛けると、
「…………!!!!」
栄華はギュッと目を強くつぶって、霊力を高める。
「もしかして……」
栄華に声を掛けた事で、ある事が考えに浮かぶ、もしかしたら目の前の影達も何も自分達を襲うとしているのではなく、ただただ苦しみから逃れようと徘徊している所を、自分達が進路上に立ってしまい、それを邪魔しているのではないのかと。




