異世界のアフレクションネクロマンサー212
「でも、それはどうやって?」
自分にも出来ると言われても、やり方が分からない以前に何が起きているのか分からない。
アフレクションネクロマンサー様の言う通りなら、これは出来損ないの人魚に捕らわれた時のような変異ではないらしいのだが、見様見真似でマネをしようとしても自分の肉体を火に変える等という芸当は……
「良く思い出して下さい、私達がいるここはどこですか?」
「私達がいる所……?ここは戦争が終わった後の日本……」
「いいえ、ここは麗騎兵の中。栄華様が遺した?」
「記憶の中」
「そうしたら、私達の肉体はどこにあると思いますか?」
「……外にある?」
「ご名答です」
そう、ここは栄華が遺した記憶の中、肉体は外、記憶の中にあるのは精神。
「外にある肉体だったら、私もこの姿にはなれませんが、記憶の中であるここなら」
そう言うと、礼人の体が翡翠色に輝いて、火の玉の姿から元の人の姿に戻るのだが、
「その姿は!?」
「えぇ、昔の頃の姿をイメージして現在の年齢に調整してみました」
そこにいた礼人の左眼は水晶化していなければ、拠点であった時の白色化していない、黒目のある普通の左眼に、白い毛が一本も混ざっていない黒髪の少年。
今までの見た事の無い姿、黒髪に丸い耳という珍しい特徴があるものの、漂っている雰囲気はありふれた普通の少年を思わせて、
「それは……アフレクションネクロマンサー様じゃなかったらというお姿ですか?」
「そう……ですね。もしも、普通の霊能者として育っていたら、この様な姿になっていたでしょう」
その姿はアフレクションネクロマンサー様が、アフレクションネクロマンサー様では無かったらというもう一つの姿。
その平凡とも言える姿に、
(アフレクションネクロマンサー様を歩めば……)
リーフの心臓が跳ねあがる。
自分だって、オークのような高い身長をしているが、もしも普通のエルフのような慎重であれば、平凡なエルフの少女であったであろう。
その少しだけ変わった特徴しか持たなかった自分が、アフレクションネクロマンサー様の道を歩めば、アフレクションネクロマンサー様と同じように変化が現れていく事になる。




