異世界のアフレクションネクロマンサー207
リーフは、突如吹いた熱風に口を押さえると、礼人も同じように口を押さえる。
繭を展開しているにも関わずに感じる熱風は、ガンガンに火を焚いている薪ストーブの前で深呼吸をするように熱い。
「離れましょう」
抱きしめていたリーフを立たせると、手を握ってその場から距離を取る。
「何がいるんですか?」
リーフはその場から離れながら地面の方を見ると、タールのように黒いモノが蠢いているのが見えた。
『グジュグジュ』と小さなあぶくを吐きながら、ときおり『ゴボッ…ゴボッ……』と大きな泡を吐いて、
「嗚咽してる?」
タールのように粘り気のある黒いモノは、何かを「吐き」出している。
地面から『グジュグジュ』『ゴボッ…ゴボッ……』と鳴きながら、黒いモノは黒いモノを吐き出し、地面には黒いモノのシミがあちらこちらに出来上がっていく。
「やっぱり、良い勘をしています。あれは妖怪で、核爆弾によって亡くなった人達の怨念がああやって地面から湧き出て、他の怨念と混ざり合う事で妖怪化しようとしているんです」
「妖怪……」
それが森の中で見た、赤いドロドロとしたモノと同じ存在というのは感じるのだが、不気味さ……内包しているモノの恐ろしさが段違いで……
「妖怪と言っても格があります。私達が森の中で見たのはまだ妖怪化して間もない状況で「何」になるか分かっていない状態でした」
礼人の言う通り、森の中で見た赤いモノと、目の前にいる黒いモノとでは格が違う。
戦いの中で命を奪われた、赤いモノ達の怨念は確かに恐ろしいものであるが、
『あっ…あぁっ……あぁあかぁあぁ…………』
黒いモノから、上半身をベットリと引きずり出す怨念は凄まじい。
赤いモノには、まだ理性があった、恨み辛み苦しい憎いという感情、それに自分達を助けようと声を掛けてくれた魂。
赤いモノには、感情の色が見えたが、
『ぐっ…ぐぅ……ぐぅぐぅぐぅ……』
黒いモノが抱いている感情が何のか分からない。




