異世界のアフレクションネクロマンサー１９４
自分に与えられた使命を全うするのに、恥辱は無かった。
麗騎兵の中で誰かが、栄華の想いを保有しないといけないのだから……しかしそれでも、共に戦いたかった。
最期の最期まで我が身を捧げ続けた栄華の弔い合戦をしたかった。
我々の無念を一身に請け負って、その身を削った栄華を労わってあげたかった。
この鋼鉄の体が壊れるその時まで戦い続け、最期には散っていった仲間達のように大地で終わりを迎えたかった。
けれど、自分が辿った道は、仲間達が戦い抜いて辛うじて手にした平和な世界で、時が来るまで生き続ける事。
与えられた使命を全うする為、少しでも生き長らえるように戦う事も動く事もやめて、洞窟の奥でひっそりと佇んでいた。
光を浴びず、誰かの目に触れる事無く、孤独でいる事でせめて死んでいった仲間達に寄り添うとしたが、栄華達が守ったエルフやオーク達が、自分達麗騎兵を探しに来てくれた。
栄華が守り抜いた者達は、栄華に心から感謝し、栄華が遺した麗騎兵を出来うる限り見付けてくれていた。
それはボロボロになって魂が抜けてしまった麗騎兵だけでなく、ひん曲がった腕の、足の一部分だけでも見付けては拾ってくれていた。
その中でも、洞窟の奥で佇んでいた自分は特に破損も無く、英雄と一緒に戦った者として街で大切に保管され、祭りの時には英雄として栄華の代わりに称えられた。
自分だけが、こんな破格な扱いを受ける事に罪悪感を覚えながらも、仲間達が築き上げた世界で生き長らえ。
いつか…いつか栄華が生まれ変わって来るのを待ち続けながら、悠久のように感じる長い年月が経ち、次第にみんなから栄華も自分の存在もただの物語として、哀しみを紛らわせる虚しい存在に成り下がり、残された霊力も尽きて霧散してしまいそうになった時、
『おいで……』
待ち続けた栄華では無かったが、それでも栄華と見間違える少年が目の前に現れてくれたのは、自分がここまで生き延びた事が無駄では無かった証明になる。
