異世界のアフレクションネクロマンサー193
体から力が抜けて意識が遠退いて……御迎えの時間が近付いて来る。
「………最後に…」
栄華の一言に、何か気付いた一体の麗騎兵が静かに額を合わせる。
最期の一言を発した栄華。
普通の人間なら今ので事切れて、想いを遺せずに無念のうちに亡くなっていただろうが……
『君は栄華じゃないのかい……?』
最期の想いを麗騎兵の中に残し、メッセンジャーとして麗騎兵を遺した。
それが誰宛なのか……この世界に新たに来たアフレクションネクロマンサーに想いを引き継いで貰う為なのか、それとも、低い確率ではあるが、魂の欠片になる事無く生まれ変わった時に、もう一度戦う為に記憶を残したのかもしれないが、
「がっかりさせてしまって、ごめんなさい……私は二月 礼人。皆さんが駆け抜けた時代の後に産まれた霊能者です。縁もゆかりも無い者ですが、私は霊能者として栄華様と同じように、この世界を護りたいと思っています。力を貸して下さるなら栄華様が遺した想いを私に見せて頂けませんか」
『…………』
麗騎兵はきっと、栄華が生まれ変わって再び自分の下に来てくれると信じていたのだろう。
「……ダメですか?」
麗騎兵の体から翡翠の涙が流れる。
栄華の想いを受け取った麗騎兵は、その想いを護る為に戦場から離れ、仲間達は栄華が護りたかった者達を護る為に戦場に残る。
栄華の想いを壊してしまわないように護るというのは、戦場で戦い続けるというのと同じくらいに重大で……それ以上に重大な事を託されたはずだが……
「辛かったですよね…自分だけ生き残る道を歩んだ事」
麗騎兵は、首をゆっくりと左右に振る。
それは礼人の言っている事を否定しているのではない、辛く悲しい思い出に耐える為に首を振っているのだ。




