異世界のアフレクションネクロマンサー188
アフレクションネクロマンサー様という英雄が、さらに敬う英雄。
「この方がですが……」
目の前の方もアフレクションネクロマンサー様というのは分かるが、それでも自分の中でのアフレクションネクロマンサー様は既に礼人であり、自分にとってのアフレクションネクロマンサー様が、目の前のアフレクションネクロマンサー様より劣ると思うのは素直に受け入れられなかった。
共に苦労をして、共に生き抜いて……それなのに、目の前のアフレクションネクロマンサー様の方が格上だなんて受け入れるのは……
「栄華様がいなければ、私の世界はとっくのとうに滅んでいて……私の世界だけでなく、リーフさんの世界も救われていたんですね」
「私の世界も……?」
栄華は確かに、今のアフレクションネクロマンサーでは無く、今のリーフ達を救ってくれている訳では無いが、今の自分達の礎になってくれた人。
自分が知らないでだけで、彼もまた英雄なのだ。
(そうだ…この人もアフレクションネクロマンサー様で、私達の今を作ってくれた英雄)
それは遠い時代のアフレクションネクロマンサー様より、苦楽を共にしているアフレクションネクロマンサー様の方に情があるというだけの話。
リーフは、自分が色眼鏡で目の前のアフレクションネクロマンサー様を見ている事に気付き、目の前で座り込んでいる過去のアフレクションネクロマンサー様を比べる対象としてでなく、過去を守り抜いた英雄と敬って向き合うと、
「この方も……栄華様もボロボロになるまで戦われたのですね」
ずっと昔に、自分達の為に戦い抜いたアフレクションネクロマンサー様は、力無くうなだれていた。
『ガチャガチャ……』
「ありがとうございます」
一体の麗騎兵が、深々と頭下げている栄華を抱き上げ、赤子を抱くように胸に抱き寄せると、栄華の手足は力無くだらんと垂れ下がる。
その姿に、彼に異変が起きているのは一目瞭然で、
「霊障害が起きているのか……」
「霊障害?それって……」
リーフは、礼人の失った左眼を無意識に見てしまう。
霊障害が具体的にどんなものなのかを表している礼人の左眼……体に異変を起こす力、それを彼は……
「そうです…私の左側の髪が白髪になって、左眼を失ったように、栄華様は手足を……」
栄華が座り込んでいたのは、長い戦いに疲れていただけでは無い、
「長くて遠い旅路でしたね……」
両手足に霊障害を発症させてしまったのだ。
もう自力では身動きが取れず、麗騎兵にお世話を焼いて貰わないといけない身になってしまい、
「それでも、アフレクションネクロマンサー様みたいに羽を……」
「それは出来なかったのでしょう……私が羽を、リーフさんが翼をモチーフに霊力とマナを形成出来ていますが、それは私達が偶々似たような力の発現とイメージを持ったからで、必ずしも同じ力を発現する訳では無いんです」
礼人の言う通り、栄華は礼人達とは違う力を持っていて、その力では礼人達のような羽を創り出す事は出来なかった。




