異世界のアフレクションネクロマンサー185
長い時を経てもなお、今にでも動き出しそうな麗騎兵ではあるが、
「この麗騎兵を直して欲しいという事ですか?」
動く事無く、奥の部屋で鎮座していたのは、どこかがおかしくなってしまっていたから。
表面的な部分の修理は、ありとあらゆる手段を用いて修復したのだろうが、内部の霊体には手を出せなかったから、こうしてアフレクションネクロマンサー様に見て欲しいという事だと思ったのだが、
「それは、出来れば願ったり叶ったりですが……」
「アフレクションネクロマンサー様、それは違うと思います。私も、お祭りの時は何度も麗騎兵を見て来ましたが、ここまで美しく淡く光っていた事はありません……私が見た事があるのは、ぼやけていて今にも消えてしまいそうな、か細い光でした」
「だったらこの光は?」
礼人の目の前にいる麗騎兵は美しく、翡翠の光を照らし出していて、とても、そんな風だったとは思えないが、
「姫様の言う通り、我々のアフレクションネクロマンサー様に対する信仰心が薄れてしまったせいなのか……アフレクションネクロマンサー様の存在が、いつの間にか物語の中の慰めものとなり、アフレクションネクロマンサー様がいた事を証明する麗騎兵すらも、お祭りの時に出す催し物の一つと成り下がってしまった時には、翡翠の光は色褪せてしまいました」
アイエンズ達は、礼人が見る前の麗騎兵がどんな姿をしていたかずっと見て来ていた。
アフレクションネクロマンサー様がいたという真実が薄れて消えていくように、麗騎兵の翡翠の光も薄れていた。
アフレクションネクロマンサー様を称え、共に戦った誇りを伝える物語すら子供をあやすだけの話となり、いつかは戯言としてみんなから忘れ去られてしまうその日が近付いていたように、麗騎兵も翡翠の光を失って、ただの銀の鎧となり、忘却の彼方に忘れ去られた主と同じように朽ち果ててしまう運命を辿るはずであったが、アイエンズは麗騎兵の側に飾られていた武具を手にすると、
「私達では、どうしようも出来なかったこの武具。現代に現れたアフレクションネクロマンサー様の武具を、先代のアフレクションネクロマンサー様のお作りになった麗騎兵の側に置いた時でした……麗騎兵が光を取り戻されたのです」
魂が抜けて、単なる武具となった物を抱き抱えながら、潤んだ瞳で麗騎兵を見つめる。




