異世界のアフレクションネクロマンサー184
「鉄騎兵と違う……」
戦場で見て来た鉄の鎧を着込んだのっぺら坊な鉄騎兵と違い、目の前に飾られている麗騎兵の銀の鎧には月桂樹のような浮き彫り細工がされている。
丸みを帯びている簡素な鉄の鎧とは違い、花びらが幾重にも重なったかのような、いくつものプレートを重ねて造られた銀の鎧は、まるで勇者の鎧のような重厚感と華やかさがある。
人が身に付ける物では無いからこそ重厚に作り上げる事が出来て、
「芸術品だ……」
本来なら無駄を削ぎ落さないといけないのだが、アフレクションネクロマンサー様の従者として相応しくするように、美しさを求めて花びらをモチーフにするという手腕が見て取れる。
「麗騎兵……」
みんなが崇めるのも良く分かる。
こんなにも美しい物が弱き者を助け、悪しき者を討つ為に戦場を舞う。
圧倒的な力を持ちながら、その力を決して悪しき事に使わずに……
「お気に召されたみたいで嬉しい限りです。それは私の一族が、アフレクションネクロマンサー様の為に作った麗騎兵です」
「麗騎兵はアフレクションネクロマンサーが作ったのでは?」
「いえ、それは少々違います。アフレクションネクロマンサー様は鎧に命を吹き込みたいと、依り代になる物を作ってくれないかと言われたのです」
「なるほど……」
前に来たアフレクションネクロマンサーも自分と同じで、何でもかんでも出来た訳では無く、他の人達の助けを借りていた。
(私達は決して、特別な存在じゃないんですね)
この世界でアフレクションネクロマンサーとして、英雄として生きた人達。
先人の人達は長い年月で、アフレクションネクロマンサーという名を消滅させない活躍をしていたのは、こうしてみんなの心の中に残っているのが何よりの証拠ではあるが、
「この麗騎兵を作り、アフレクションネクロマンサー様のお役に立てた事は、我々にとって誇り高い事であり、長い長い時を超えても、祭りの時には街の中央に飾っては、みんなに笑顔の花を咲かせていたのです」
協力して戦い抜いたからこそ、共に戦った記憶がとても大切な思い出となり、大切な思い出が次の世代にも繋がっていくように物語と姿を変えて、物語が夢や幻では無かったと、みんなが作った麗騎兵が姿を留めて、過去にアフレクションネクロマンサー様がいた事を証明し続けてくれていたのだ。




