異世界のアフレクションネクロマンサー183
「それでしたら、私のわがままを先に聞いて頂ければと……こちらへお願い致します」
自分の願いを優先させて貰えるとなったアイエンズは、申し訳そうにしつつも礼人の手を引いて奥の方へと連れて行く。
(リーフさん?)
リーフが良いと言うのだから、アクセサリーを作るのを後回しにし、連れて行かれるのは問題無いのだろうが、問題なのはリーフに違和感を感じていること。
話の流れを考えれば、アイエンズの話しがアフレクションネクロマンサー関係だと推測するのは簡単な事なのだが、リーフから感じる雰囲気は話の流れから推測したというよりは、預言に近い……未来予測みたいなものを感じる。
霊力に目覚めた事で彼女だけの、何かの力が目覚めつつある事に気付くが、
「気になさらないで下さい。私は大丈夫ですから」
「後でですね……」
ここでは込み入った話は出来ないので、アイエンズの願いを優先する。
分厚いローブの上からでも触れて来る熱い空気を掻き分け、一心不乱に叩かれる鉄の音がローブを突き抜けて耳に響く中がそれを無視して、奥の奥の方へと行くと木の扉に銀の装飾がされている扉があった。
奥まで来るまでに、熱が籠らないように木で出来ている簡素な扉があちらこちらにあったが、ここだけは銀の装飾をして、ここは大事な部屋だと主張している。
一目見て、この部屋に大事な物が置かれていると予測させる場所に、
(ここに、しまわれているのか)
魂を込めた武具がしまわれているのかと思ったが、
「麗騎兵の保管所?」
「はい。見て頂きたいのは麗騎兵でございます」
リーフはこの場所を知っていたらしく、目の前の扉に手を置く。
中にあるのが分かるのだから、勿体ぶらずに扉を開けて、中にある麗騎兵を確認する…それだけの話なのだが、
「目を覚ましたの?」
無意識に口走っていた。
「目を覚ましたとは?」
アイエンズは、リーフが言った事が分からず、どういう事かと聞き返すが、
「えっ…うぅん、何でも無いの」
自分でも無意識に感じた事を口走っただけなのだから、何かを説明する事は出来無いので、誤魔化す形で扉を押して開けると、
「これが麗騎兵……」
開け放った先には古びた銀の鎧を着た、翡翠色に淡く光る鋼鉄の兵士が飾られていた。




