異世界のアフレクションネクロマンサー176
アイエンズは、正解を出せなかった礼人から視線を離し、一心不乱に鉄を叩く者達に視線を向けると、
「アフレクションネクロマンサー様には、あの姿がどのように見えますか?」
「あの姿…?一心不乱に、みんなの為に働いているように……違うのですね」
礼人の目に映る彼等は、窯の中で燃えるハンマーを睨み、叩ける状態になれば間髪入れずに取り出して叩き始める。
叩いて叩いて叩きまくり、冷えてくれば窯に素早く放り込み、ぶっ続けで動く為に飲み物を補給する。
その姿は職人が懸命に脇目も振らずにプロの仕事をしているというよりは、鬼気迫る勢いでがむしゃらに打ち込んでいるというのが正しい。
「必死なんですね……」
なぜ、そこまで鬼気迫っているのかは分からないが、それでも彼等が鬼の形相で何かの為に打ち込んでいるのは分かる。
まるで自分の魂を叩き込むような姿に、彼等の気持ちを理解したいと思うと、
「我々は、誇りを取り戻す為に叩いているのです」
「誇りを取り戻す?誇りを込めるじゃなくて?」
「そうです。我々は誇りを失っていたのです」
アイエンズは自分達の気持ちを吐露し始める。
「我々の作る武具はどれも一級品……どこの街にも引けを取らない物ばかり。我々から武具を受け取った者は名前を刻み、中には物々交換として装飾を施す事を願う者すらいました」
「そうですよね。立派な武具に特別な想いを込めたくなる気持ち、分かります」
「はい……戦場から帰って来た者は、戦場で活躍した武具を纏って誇らしく凱旋し、戦場で散った者達の武具は遺品として誇らし掲げて持って帰って来てくれました。そしてそこには、我々の誇りも掲げられて、共に勝利を味わっておりましたが……」
「そっか……鉄騎兵の存在ですね」
アイエンズの話を聞いていて、頭の中にピンッと来たのは通常の武具では対抗するには分の悪い鉄騎兵の姿。




