異世界のアフレクションネクロマンサー175
初対面にも関わらず、大げさと言って良いほどの仰々しい挨拶。
「あの…私はアフレクションネクロマンサーではありますが、あなたと関係のあるアフレクションネクロマンサーとは違う存在です。そんなに、かしこまらないで下さい」
アイエンズの深々とした挨拶に、この人の一族とアフレクションネクロマンサーで何かしらの縁があるのは察するのは容易であり、いくら自分もアフレクションネクロマンサーとはいえ、血筋でも何でもない自分にこんなにも敬意を示して貰うのは違う話。
勘違いでこんなにも深々と挨拶される事に申し訳無く思い、早急に自分が敬意を表して貰う相手ではないと伝えるが、
「そんな事はございません。私が感謝しているアフレクションネクロマンサー様はあなたです」
「あぁ…説明しますね」
アフレクションネクロマンサーという存在が神話のように伝えられていては、違う人物と言っても同一視されてしまう。
礼人は、一から説明するのは大変なので、どの辺りを話そうかと思案しようとしたが、
「アフレクションネクロマンサー様…私達、ドワーフは戦いに出ない代わりに、こうして武具を作っております」
「えっ…あっはい」
自分が思案する前に、アイエンズの方から話を進めて来る。
彼がしようとする話は、きっと過去のアフレクションネクロマンサーとの馴れ初めの話なのだろう。
それは自分とは一切関係の無いアフレクションネクロマンサーなのだが、
(そうだな、折角だから話を聞いてみるか)
他にいたアフレクションネクロマンサーの情報を聞けるのは、価値ある話だと聞いてみる事にする。
「燃え上がる炎を前に、我々が一歩も引かずに鉄を叩くのは、ここが我々にとっての戦場だからなのです……そう、ここは我々にとっての戦場、では我々にとっての敗北とは何であると思われますか?」
「ドワーフの敗北?」
耳を傾けていた礼人。
話半分で聞いていた訳では無いのだが、一度も考えた事の無い質問に辺りを見渡し、
「……戦う為の道具を揃える事ですか?」
自分の目の前で必死に鉄を打ち続けるドワーフを見て、簡単に答えを出してみる。
戦場で戦うには武具が必要になる。
数が足りなければ戦場に行ってもろくに戦えないのは当たり前で、今もこうして生産しているのが何よりの答え。
安直な答えだとは思いつつも、的外れな答えでは無いと自負するが、
「それも正解ですね。武器が無ければ戦えないですからね……ですが」
「ですが?」
「私の中での答えは、武器を手にした時、英雄の剣を持ったかのように心の底から勇気を奮い立たせ。防具を身に纏った時には、赤ん坊が毛布に包まれたかのような安心感を与える事がこそが、我々の勝利だと思っております」
どうやら礼人の答えは、アイエンズの答えと程遠いものであるらしい。




