夢の中72
この世界と、もう一つの世界がどういう因縁があるのかは分からない……分からないが……
(アフレクションネクロマンサー様の大切な人を手に掛け………)
「アフレクションネクロマンサー!?神にでも祈っているつもりか!!」
償いの言葉を発し、
(それでも我々には貴方様に頼るしか……)
「喋るなって言ってるんだ!!」
助けを求める声を出そうとしているのが分かる……
分かっているからこそ礼人は大声を上げて言葉を遮り、霊力とマナが結合した新たな力は全ての闇を、影すらも焼き尽くすかのように荒々しく光らせる。
全てを焼き尽くそうとする光は礼人の一呼吸、一呼吸に呼応するかのように輝いて羽ばたく。
先程の礼人も、二月を犠牲にして光の蝶の羽を作ったが、今の光り輝いている羽と比べれば、先程の羽は指先に止まる小さな小さな可愛らしいしじみ蝶の羽。
だが、今の礼人の羽は世界中に散らばりながらも世界最大の大きさを欲しいがままにするアゲハの羽。
ゆっくりと羽ばたく羽は、まるで小さな虫を威圧するかのようで、今では貧弱な細身になってしまった鋼鉄の巨人には、
(良いのです…怒りのままに我々を裁いて下さって……その前にどうか……)
その羽ばたきですら恐ろしくて堪らない。
そんな震えながら自分に声を、助けを求める懇願の声が自分の中に響くと、
「…………っ!!」
礼人はその声を搔き消すために、黙ったまま光の羽を一気に後ろに伸ばして力を溜めると、今度は勢いよく羽を広げて溜めた力を放出する。
光の羽が広げられた瞬間、周囲の黒い霧が完全に蒸発して光に支配される。
それは終焉を告げる光の暴力。
闇に包まれた世界を切り裂き、そこだけ光の世界が広がる。
そこには闇の居場所等、存在しえない。
まして、弱者と化したデカいだけの巨人にこの光を耐えうる方法などある訳無く、もし耐えうることがあればそれは奇跡か……
(……アフレクションネクロマンサー様)
「…………ぐぅ…」
礼人があえて巨人だけを、その光で包まなかった時である。




